プロフィール

Author:相坂一考
滋賀県大津市出身
07年1月に推理小説「執念」を文芸社から出版

このブログは3部康成です。1部が「コラム」、2部が連載「難病との闘い」、そして3部が、速報、「昨日の雅子」です。

 

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613 多様なトーナメント方式

 競技会で勝者や順位を決める方式を総称してトーナメント方式というが、これには、その目的に応じて幾つかの種類があって、このオリンピックでも、種目によって別々の方式が使われている。
 特異な方式を採用しているのが野球だ。その野球もいよいよクライマックスを迎える。昨日の中国戦に勝った星野ジャパンも四強に入った。今日のアメリカとの勝負の結果に関わりなく、4強による決勝トーナメントの2試合に連勝すれば、悲願の金メダルの獲得となる。
 つまり、野球では、最後の2連勝で、それまでの勝ち負けはチャラとなり、金メダルの獲得が出来るのだ。何だか変な方式だが、今の日本チームにとっては、ラッキーな方式であると言えよう。但し、一度負けている相手との戦いになる訳だから、今日も勝って勢いを着けて、そのクライマックスの戦いに臨むことは必要だろう。
 一方のソフトボールは、また違った方式で金メダルを決める。ページシステムと呼ばれる方式で、これは、4強が、1位と2位、3位と4位が先ず戦う。次に1位と2位の敗者と3位と4位の勝者が戦う。そして最後が、その勝者が、1位と2位の勝者と戦って金、銀を決めることになる。従って、予選リーグで2位になった日本は、後の二つに連敗しても3位となる訳で、最悪、銅メダルが決まっているのだ。
 蛇足だが、トーナメントと呼ばれる方式には、この他にも、パナマス方式、ダブルエリミネーション方式などがあって、結構複雑なのだ。
 さて、話は少し飛躍するが、我々サラリーマンの出世争いの戦いは、今の男子の野球の方式に近いのではないかと思う。昔は「栴檀は双葉より芳し」で、単純なトーナメント方式に近かったと思うのだが、最近では、とりあえず、リーグ戦方式で、一定の成績、実績で評価を受ければ、そこから、それまでの実績をチャラにした形て、改めての戦いで役員争いを競う形になっているように思う。
 そんな考えを拡大してみると、日本の総理の座は、パナマス方式、若しくは、ダブルエリミネーション方式に近いのではと思うが、如何なものか。
 改めて、オリンピックの話に戻すが、ここまで来た以上、野球もソフトボールも、容易ではないと思うが、全力を尽くし実力を発揮して、金メダルを強奪して欲しいものだ。頑張れ、日本!!

2.連載(578) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(207)
  第六章 真夏の夜の夢(10)

(2)身辺整理(その1)
 一考が、余命が長くてあと一年だとの深刻な告知を受けたのが4月半ばだったが、それから、早いもので、あっという間に一ヶ月が過ぎた。この間、一考は自分に残された貴重な時間をどう生きればいいのかに腐心していた。特に、自分が亡くなった後のことについての対応、特に雅子の今後のことについては、然るべき考えが纏まらず、掴みどころのない不安に苛まれるのだった。
 取り敢えずは、身辺をきちんと整理しておかねばならない。当然なことだったが、浮気相手とか、愛人とか言った余計な人間関係はなかったし、これといた借金の類もなかったことで、その種のことで気を使わずに済んだのは幸いだった。
 厄介だったのは、自分の持ち物の整理だった。70年間の生きた証であるいろんな収集物の量は半端ではない。物を書くのが趣味であったことから、その資料として取っておいた書籍、書類、ビデオテープの類が、思いのほか多いのである。
 それらは、退職後に暇を見つけて可能な限り整理して来たつもりだったが、結果的には、どんどん溜まる一方だった。この際、可能な限り整理しなくてはと思う一方で、時間がなければ、そのまま残ったとしても、大きな問題にはならないだろうとも考えたりしていて、考え自体が揺れていた。ただ、誤解を受けるような余計な裏ビデオテープなどの類の処分は不可欠で、それらについては。即刻廃棄処分した。その一方で、若い頃に集めた有名女優らの何冊かのヘアー写真集は、何も棄てることもなかろうとの思いもあって、そのまま残すことにした。親父も、そんな趣味があったのかと、息子達に思われても恥じることもなかろうと、自分に言い聞かせての決断だった。
 その一方で、自分の親父の無くなった場合のことを思い出していた。文学の研究や趣味のために集めていた本が、そのために増設した大きな部屋いっぱいに残したまま逝ってしまった。そのため、未だに手がつけられず、そのままになっている。中には、歴史的な価値があるといわれる書籍があるようなのだが、それがどれだか一考には分からず、今でも手のつけようが無く、未だにその処理に困っているだけに、せめて、自分の分だけでも、同じ轍は踏むまいとの思いは強かった。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(224) 8月19日分
 雅子が元気がないと見えるのは、口数が少なく、声が小さくなっているからで、お腹が痛いといったような身体が痛むということではないのは救いだった。長く座っているために、お尻が痛くなることが増えて来ている。前夜も、それでナースのお世話になったという。
 なお、昨日の雅子の話しの中で、誰かが来てくれて優しく応接してくれたというのだが、その具体的な中身が掴めずしまいだった。コミニケーションの難しさから、最近、その種の話が時々あって気になっている。

612 ジャマイカの強さと引退話

 オリンピックという大きな宴も後6日間となり、ほぼ峠は越えた。昨日のサッカー、なでしこジャパンは良く頑張ったが、力及ばず負けてしまった。期待されていた女子のトライアスロンで、井出樹里選手が5位と健闘したが、残念ながらメダルには届かなかった。
 残された種目の中で、金メダルが期待され、その可能性があるのは数少ない。野球、ソフトボール、それに男子マラソン(筆者は佐藤敦に期待)ぐらいではないだろうか。ボクシングの川内将嗣に期待する人もいるようだが…。いずれも、大敵がいて、金メダルは容易ではなさそうだ。
 それにしても、ジャマイカの短距離の強さはなんなのか? 男子の9,69秒を出したウサイン、ボルト選手だけでなく、女子では1位から3位までを独占した。瞬発力が勝負の鍵となる短距離でのこの強さの秘密はなんなのか。凄いの一言である。13億人の人口を抱える中国の躍進は、何となく納得できるとして、人口270万人程度で、(中国の0,2%程度)、広さは新潟県と同じくらいの面積の島国なのに、どうしてそんな逸材が育つのか、どんな教育をしているのか、その要因を研究してみる価値はありそうだ。
 大きな宴の影になって目立たなかったが、第90回全国高校野球選手権記念大会が、昨日、大阪桐蔭高校の17年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。いつもはよく見ていた大会だったが、さすがに今年は、二日目の地元の近江高校の敗退以降は、ほとんど見る気がしなかった。結果的には、かなり打撃陣が主役となたt大味な試合が多かったようだ。
 さて、宴も峠を越えると、選手の引退宣言が話題になる。レース前に表明していた女子マラソンの土佐礼子さんは、あのアクシデントがあったことでその意志を変えるのかどうかは不明だが、昨日の段階で、レスリングの伊調、千春、馨姉妹、それに、浜口京子(同氏は筆者の認識間違い?)が引退の意志を表明したようだ。注目の水泳の北島康介選手はどうするのかは、皆の注目するところだ。
 一方、昨日41歳の誕生日を迎えたオリックスの清原選手も、遂に今期限りでの引退を決意したと報じられている。こんな引退話の数々には、福田康夫さんも、決して心穏やかではないだろう。

2.連載(577) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(206)
  第六章 真夏の夜の夢(9)

(1)厳しい告知(その9)
 この時点での一考を取り巻く身内の健康状態は、総じて、幸いなことに、大きな問題も無く健やかな日々を送っていた。
 まもなく、100歳を迎える母親は、衰えは進んでいるが、姉の久子の献身的な介護、世話で、寝込んでしまうことも無く、注意しながらでも、ゆっくりと自分で歩くことも出来て、長寿を楽しんでいた。身体の一部が少しでも痛むと訴えると、久子が直ぐに掛かり付けの医者に連れて行くという細かな面倒見のお陰でもあった。
 母親に関しては、殆どは久子任せの一考だったが、週に4日の夕食作りだけは続けていた。限られたレパートリーを工夫してローテションしながらの食事作りに、さすがの一考もそのマンネリ化の回避には、大変な腐心をしていた。一考にしてみれば、この食事作りが、母親に何かをしてあげている唯一のサービスで、せめて、これだけを続けることで、久子の全面的な面倒見に、唯一の楔を打ち込んでいるような見方をしていた。つまり、自分も母親の世話では、一つぐらいのサービスが出来ているとの言い訳のようなものだった。
 とにもかくにも、100歳を目前にした母親が、意外なくらい元気に毎日を過ごしてくれていることに、一考も安堵していた。
 二人の息子達も、特に何か心配事があるといったようなことはなかった。強いて言えば、昨年に結婚した長男の太郎にまだ子供がいないことだった。次男の方には、長男の結婚後に、待望の二人目の子供が出来た。それも希望していた長男の誕生で、一考には申し分ない跡継ぎができたことに満足していた。
 そういう意味では、一考自身の家族の環境は申し分ない状況下にあったと言えた。、ただ、一考の姉妹達、雅子の兄姉達も高齢になっていて、それなりに弱ってきていることが唯一の心配事だった。つまり、100歳の母親を持っていると云うことは、取りも直さず、一考はもちろんのこと、母親一辺倒の久子を含めた姉妹達も70から80歳近くになっている訳で、介護を続けることにも容易でない状況に追い込まれてきていることには違いなかった。
 いずれにしても、今後、一考が責任を持たねばならない対象は、雅子だけにフォーカスしていい訳で、その意味では幸いであると言えた。(以下、明日に続く)

3、速報、昨日の雅子(223) 8月18日分
 ここ数日の雅子は、口数も少なく、元気がないような状態が続いている。

611 あっけない幕切れ

 早いもので、北京オリンピックも、もう半分以上が終わった。金メダルの数は、今のところ8個で、残されている種目の中で、可能性のあるものは極めて少なく、アテネ大会の16個には遥かに及びそうに無い。
 さて、昨日は期待が裏切られた日だったとも言える。その一つが、女子マラソンだったが、ドラマはあっけなく終わった。レース開始後、1時間足らずで、本命の土佐礼子にアクシデントが起きたのである。後で聞くと、この朝も、痛み止めを飲んでのスタートだったという。
 陸上のハンマー投げの室伏選手の場合も同様で、腰痛が相当に酷かったという。予選を一回でクリヤーしていただけに、メダルに届かなかった失望感は小さくない。
 つまり、土佐さんの足の状況、室伏さんの腰痛は、事前に分かっていた訳から致し方ないことだろうが、期待して見ている国民には騙されたドラマを見せられた様で、不満と失望感は拭えない。
 そういう意味では、野口みずき選手のように事前にはっきりしてくれていたのはすっきりしてよかったとさえ思う。作戦上、事前のその種の情報公開は出来ないだろうが、見ている側は偽装ドラマを見せられたわけですっきりしない。
 こうして、考えてみると、闘いのその日に、体調良く自信を持ってスタートラインに立てるか否かで、勝負が決まるとでも言えそうだ。選手達は、そのために4年掛けて準備して来ているのだ。それが、晴れの舞台で、1時間足らずで、あっけなく終わってしまう勝負の世界はいかにも厳しい。一番、がっかりしているのは当の本人達だろうが、期待していたファンのがっかりも小さくは無い。
 そんな中で、昨日のレスリングの伊調馨の金、浜口京子の銅の奪取は、貴重な救いだった。これで、女子レスリングは全員メダルのすっきりした快挙だった。また、水泳の男子400メートルメドレーリレーの銅メダルも良く頑張った。
 ところで、皮肉ではないが、あっけない幕切れはある意味ではさっぱりしていて爽快感を生むこともある。福田総理のあっけない幕切れは何時訪れるのだろうか?

2.連載(576) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(205)
  第六章 真夏の夜の夢(8)

(1)厳しい告知(その8)
 雅子には辛いことだが、自分では何も出来ず、一日の半分ぐらいの時間を椅子に座って過ごす生活パターンが続いている。従って、お尻が痛くなるのだが、それを何とか緩和してやるのも、一考の一つの大事な役割だった。
 要は、時間を見計らって、身体を少し持ち上げてやればいいのだが、その作業が、もはや、一考には大変難しい作業となっていた。腰を痛めてはいけないとコルセットをして頑張るのだが、体力が減退していて思うように持ち上げられないのだ。それでも、少し持ち上げてやるだけで、雅子のお尻の痛みが結構軽減できるので、遣り甲斐のある仕事ではある。
 ベッドに横にして欲しいという希望が増えて来ているのも最近の傾向だ。身体の弱体化がそんな形で現れてきていると見ることが出きる。その頻度が更に増えれば、寝たきり生活へのスタートになりかねず、一考の心配事の一つでもある。
 また、よだれが溢れ出て来るのも厄介で、それを拭ってやるのも一仕事だった。特に、何かを喋ろうと、口を開ける場合とか、何かを食べさせたり、飲ませたりしている途中で、口を開けたりすると、たまっているものがどっと流れ出すのだった。従って、何か口に物を入れている時には、なるべく、全てを飲み込むまで口を開けさせないようにするのは大事で、余計なよだれを流させないコツでもある。
 だからと言って、雅子に「黙っていろ」という訳には行かない。やはり、適当に口を動かすことは大事で、それは取りも直さず口のリハビリでもある訳で、なるべくその種の運動、つまり、口のリハビリは欠かせない。もしも、口が動かせなくなったら、大変なことになるという不安が先行する。忽ち困るのは、食事が出来なくなることだ。そうなったら、どのように栄養を取り入れるかと云う次の問題が出て来る。
 頭が下にたれて、前かがみになる姿勢も心配の一つである。これが続けば、内蔵の圧迫に繋がるし、もう少し上向きの姿勢に変えるように矯正しなければと、何かとかその矯正を図っているが、結果は、今一つである。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(222) 8月17日分
 前日と変わらない症状。テレビの横の少し離なれたところに置いてある時計が見難いと訴えたので、少し方向を変えてやる。やはり、時計は彼女は唯一の友人なのかもしれない。とにかく、時間が時を刻むのを確認することで、気持ちを落ち着かせているようだ。ベッドに横になっても見えるようにしてあるのも、そういう意味である。

610 粘り、粘りに感動、興奮

 昨日も日本人選手の活躍は各種目で見られて興奮した。筆者が、偶々見ていた男女の卓球では、その粘りの凄さに思わず引き込まれた。男女の試合を合わせると、妻の雅子を施設に見舞いに行く少し前の1時過ぎから見始めて、自宅に戻った5時を過ぎても試合が続いていた。長丁場のとてつもない好試合に興奮した。
 その女子の試合は、銅メダルを争う3位決定戦の予選で香港と対戦だった。3ゲーム先取の試合で、先に1ゲームを失った後の第2ゲームに登場したのが、あの福原愛ちゃんだった。期待の彼女も、直ぐにはリズムに乗れず、立て続けに2セットを落として土壇場に追い込まれたのだが、そこからが愛ちゃんの素晴らしい粘りが始まり、その後3セットを連取してこのゲームをものにして、試合を1−1のタイに持ち込んだ。その勢いで、平野早矢香選手と組んで、次のダブルスに登場したが、このゲームも立ち上がりが振るわず、あっという間に2セットを落とした。「これは駄目だろうなあ」と思って、妻の見舞いに施設に向かった。施設到着後に試合の状況を確認すると、あの苦境に追い込まれていたダブルスは、福原、平野組が、あの苦境から、その後3セット連取して逆転勝をしていたのである。そして、第4ゲームを落として、2−2となったものの、最後の第5ゲームで、平野早矢香選手が、今までに勝ったことにない格上の選手に、一気に3ゲーム連取で勝ち切り、日本に貴重な勝ちをもたらした。今日、行なわれる韓国戦に勝てば、卓球では初めてのメダル獲得となる。はらはらしたが、凄い興奮させられた素晴らしい試合だった。蛇足だが、愛ちゃんの成長、平野選手の、あのきゅっと引き締まった脚が、とても魅力的だった。
 続いて行なわれた男子の場合も、それに劣らぬ好試合で、出だしの2ゲームを失ったものの、粘りに粘って2ゲームを取り返してタイに持ち込み、最後のゲームにメダルを賭けたのだが、これのフルセットに持ち込む頑張りだったが、最後は一歩及ばず、決勝進出はならなかたt。
 試合の醍醐味の最たるものは、粘って、粘っての逆転勝利にある。昨日の女子の卓球は、その典型的な素晴らしい好試合で、しかも、その切っ掛けをあの福原愛ちゃんが作ってくれたのだ。正直言って、彼女の試合振りをフルに見たのは初めてだったが、立派な選手に育っているのに感心したした次第である。
 粘って、粘ってという意味では、あの「なでしこジャパン」の最初のニュージランド戦で、2−2に追いついた試合、バドミントン女子で、前田美順、末綱聡子の世界ランク1位の中国チームを破った試合などが印象強く頭に焼き付いているが、昨日も、レスリングで、吉田沙保里選手の金メダル連覇、伊調千春選手が二回戦で、アテネ大会で金を取られた相手と対戦で、リードされていた土壇場での逆転勝ちも圧巻っだたし、水泳の中村礼子の粘っての銅メダルなどは素晴らしい感動を与えてくれた。
 一方、期待の星野野球だが、昨日は痛い逆転負けを喫した。しかし、これから全部勝ち進めば、金メダルの可能性が残されている訳で、これこそ粘りを発揮して、なんとかその初期の目標に到達して欲しい。
 醍醐味といえば、男子100メートル決勝レースでのボルトの世界新記録、9.69秒も圧巻で、粘りで得られる感動とは違った別の興奮、感動を覚えた。人間の能力の限界には壁があるはずだが、それが何処にあるかは、誰も知らない。恐らく、8秒台は不可能だろう。
 さて、今朝は、間もなく、期待の女子マラソンがスタートする。金メダル候補だった野口みずき選手は欠場するが、粘りを信条とする土佐礼子選手が、どんなレースをしてくれるか楽しみである。彼女はこのレースで引退すると表明している。心に期している何かがあるはずだ。また、初出場の中村友梨香選手は若手のホープで、その未開発の魅力に期待するところも大きい。とにかく、じっくりと、この二人の主演による2時間半のドラマを見守りたい。、

2.連載(575) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(204)
  第六章 真夏の夜の夢(7)

(1)厳しい告知(その7)
 一方の雅子の方は、ここ一年ほどは、外見上はそれほど変わらない症状が続いている。進行性の病気といっても、どうやら行き着くところまで行ってしまったと考えたいのだが、心配は見えない部分での症状が分からないから、不安は消えてはいない。とにかく、自分では何もすることは出来ない。それでも、何とか、自分の口で物が食べられて、水などの液体を飲むことができることは幸いだった。しかし、最近では飲み込む作業が以前のようにスムーズに行かず、ストローで吸い上げる力も弱くなって来ていて、苦労することが目立ち始めていた。
 加えて、内臓の働きに衰えが見え始めていて、便秘が激しくなり、通じでは、雅子の大変な頑張りが必要になっていて、便秘薬の服用も頻繁になって来ている。内臓、特に大腸の働きが低下してきているためと思われる。その結果、便秘薬の服用が多くなり、排泄のリズムに変調を来たし、通常時間外での通じが頻繁に起きるような悪循環となり、介護士さんを煩わせることが増えてきている。それでも、介護士さん達の優しい努力で、何とか毎日の生活を維持できているのは、幸いなことである。
 一考が最も手を焼いているのが、コミニケーションの難しさで、以前にも増して大変な苦労を伴うものになっていた。そこで考え着いたのが、言葉のカードを用意するのだった。「トイレ」「テレビ」「衣装」「息子」「飲み物」「食べ物」といった大事な単語、「急ぐ」「ゆっくり」「後で」などのアクションに関するタイミングなどを書いたものを用意しておいて、雅子が言おうとしている内容を察知して、そのカードを見せて確認するのである。かつてやっていた一文字、一文字を確認してキーワードを探し出す作業は、雅子の反応が曖昧なことが多くなり、その方法でのアプローチは限界に来ていた。
 そんな作業を通じて、雅子の脳の働きにも若干の衰えが見え隠れするのが気になっている。例のキーワード探しの作業でも、時々、最初に言った文字を否定して言い直すケースなどが増えてきていて、一考の気持ちを苛々させることが増え始めた。どうやら、知能の働きに齟齬が出始めているのではと、一考は心配するのだった。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(221) 8月16日分
 イエス、ノーの表現が曖昧になって来ているのが気になっている。それに、体力の衰えのような感じもあって、この日も、トイレの後はベッドに横になるのを希望した。一進一退というよりも、どこか見えない部分での悪化が進んでいるようで心配である。

609 中国、韓国には、「負けないで!」

 昨日は、63回目の終戦記念日だった。今日の繁栄した日本の礎となって、先の戦争で亡くなられた多くの方々には、心から追悼の気持ちでいっぱいです。二度と戦争はあってはならないと願いながらも、そうでない世界の現実に苛立たしさを覚えます。
 世界の戦い、競い合いは、文化、スポーツでの正々堂々とした戦いで充分であると思いながら、昨日もオリンピックを楽しんだ。多くの素晴らしいぶつかり合い、戦いがあったが、中でも、サッカーの「なでしこジャパン」が中国を破って見事な勝利を挙げたのは圧巻だった。予選リーグの初戦からの崖っぷちに追い込まれた苦境を考えると、夢のような素晴らしい進撃である。あと一息でメダルに届くのだが、果たして、どうか。
 柔道の最終日となった昨日は、日本がやっと本領を見せてくれた。男子100キロ超級では、石井慧選手が堂々たる金メダル、女子の78キロ超級では、塚田真希選手が、宿敵の中国の佟文に、土壇場で逆転を食らったのは極めて残念だったが、それでもしっかりと銀メダル取って面目を保った。
 戦いを終えての二人の言葉が印象深い。石井選手は「戦いは殺し合いだ。これで生きて帰れる」といい、塚田選手は「これが結果です」と直後に答えた後、その後のインタビューで「いつもの店で、思いっきり、アジのフライが食べたい」と語っていた。その庶民性が、とてもいい響きで、筆者に好印象を与えてくれた。
 とにかく、開催国の中国が圧倒的に強い。それに韓国もメダルの数では、今のところ日本より上だ。この日も、上記の女子サッカーや女子柔道の他にも、女子のバドミントンで、末綱聡子、前田美順ペアが世界ランク3位の中国チームと3位決定戦を戦ったが、いい処がなく敗退した。先に、世界ランク一位の中国人ペアを破って気を吐いたのが、あまりにも鮮烈だっただけに、その後の準決勝戦では韓国ペアに続く敗北に、今一つ吹っ切れない思いである。
 とにかく、ここに来て、竹島問題、東シナ海油田問題などがあって、中国と韓国には、「負けないで!」という気持ちが日に日に強くなってきている。その意味では、今日行なわれる野球で、韓国と大事な試合がある。これにはどうしても勝って欲しい。
 いずれにしても、オリンピックが始まって、毎日が、美味しい料理のようなテレビ番組のてんこ盛りで、妻の介護の厳しさも気にならない気合の入った日が続いている。オリンピックが終わればどうなるのか、今からとても心配です。

2.連載(574) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(203)
  第六章 真夏の夜の夢(6)

(1)厳しい告知(その6)
 更に、気掛かりになり始めたのは記憶力の低下だった。昨日のことを思い出すのも大変で、時には、よく使う単純な言葉がなかなか出てこなくて困ることも多くなっていた。明らかに、老化現象が進んでいるというよりも、一種のアルツハイマー状態になりつつあるのではとの不安がある。
 誤解があってはいけないので付記するが、アルツハイマーと言っても、メモリー機能に問題はあるが、その時点での判断には問題はなく、生活そのものには、大きな支障はなく続けられているし、過去の古い記憶はしっかりと保持されている状態なのだ。つまり、お酒を飲みすぎて記憶をなくした状態に似ているといえる。
 そんなこともあって、食欲の方も次第に細くなり、最近では無理をしても出来るだけ食べるように努力するようになっていた。あれほど好きだったお酒も、ここに来て一週間に一度ぐらい小さいサイズの缶ビールを飲むのがせいぜいで、現役当時の酒量は何処に消えてしまったかとびっくりするくらいの変化だった。
 それでも、内臓面では特に異常を示すようね変化は気づいtでいないが、全体的に身体の疲れが目立つようになって来ていた。
 長く、持病となっている不整脈については、相変わらず、毎日ワーファリンを飲む生活が続いている。本当にこれを飲まないと駄目なのかと言うような疑問を抱いてはいるが、もう飲み始めてから、かれこれ5年も続けていることで、「飲まない」という決断には勇気がいるし、実際に危険も危惧されるので、致し方なく飲み続けているのである。そのために、1ヶ月に一度の通院も欠かせないし、経費もバカにならない。いずれにしても、人間は弱い動物である。
 そんなことで、最近では、車でドリームスペースに通うのも大仕事で、入居当初のように一日2回も通っていたのは、今思うと夢のようなことであって、最近では、毎日通うことが、精一杯の状況になってきていた。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(220) 8月15日分
 前日の元気なさに比べると、少し回復していた。口数も少し増えていたが、やはり、声を出すのが辛そうだ。
 また、施設のルールで、夜9時に消灯されるので、オリンピックの美味しいところが生で見られないのが残念そう。

608 不本意な敗退

 北島康介選手の2種目2連覇、体操の内村航平選手の逆転銀メダルなど、オリンピックは昨日も盛り上がっていた一方で、柔道の男子100キロ級の鈴木桂治、女子78キロ級の中沢さえの二人の期待を裏切っての意外な敗退には、少なからず失望した。鈴木選手の場合は、一日に2回も一本を取られての完敗で、見ているのも辛かった。恐らく本人も柔道人生で初めて味わった苦杯だったろう。前回のアテネ大会での井上康生選手の同様な敗戦を思い出す。
 今回の北京での柔道を見る限り、谷亮子、内柴正人、中村美里、谷本歩実、上野雅恵の各選手のようにしっかりと、或いはそれなりに輝いた人たちと、平岡拓晃、小野卓志、泉浩選手、それに昨日の二人のように全く、或いは殆ど力を出せずに敗れ去った人たちの二つのグループに分かれた結果となった。アテネで金メダルだった水泳の柴田亜衣選手も、この日の800メートル予選では、全く力を出せずに敗れ去った一人である。そういう意味では、マラソンの野口みずき選手もその無念を味わっている一人だ。
 この日のために懸命に大変な準備をして来て、殆ど、或いは全く実力を発揮しないまま終わってしまった方たちの無念さは察して余りある。4年後のロンドンでリベンジという方もいるかもしれないが、引退に追い込まれる人もいるだろう。
 しかし、オリンピックに出場を果たされた皆さんは、大変な努力をされてその権利を獲得されたエリートの人たちだ。残念ながら本番の舞台で力を発揮できなかったことは無念ではあろうが、何も命を取られた訳ではない。いたずらに自分を責めたり卑下することもない。勝負は時の運ということもある、人間万事塞翁が馬と云うこともある。不出来だったことをバネにして、それぞれのこれからの人生で頑張ってもらいたい。
 僭越ながらもそんなことを申し上げる筆者は、そう申し上げることで、妻を介護する自らの毎日に叱咤激励しているのである。

2、連載(573) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(202)
  第六章 真夏の夜の夢(5)

(1)厳しい告知(その5)
 一考が、多少の体調の変調を意識し始めたのは、昨年の秋頃からだった。再び、その右手の指先のしびれが始まったのである。まだ、車の運転に差し障るまでに至ってはいないが、これから先への不安は募るのだった。加えて、視力の大幅な悪化も不安を深めていた。単なる老化だろうと決め付け、なるだけ気にしないようにしていた。しかしそうは言っても、ぼんやりとしか見えなくなる視力の低下は心配で、思い切って新たな眼鏡を購入して、その改善を図った。その場合も、最初は少しは良く見えていても、時間の経過とともに、十分とは言えない状況に戻ってしまうのだった。視力が年齢的に衰えて老眼になってゆくのは自然であって、それほど気にすることもないと考えるように務めていたのだが、車を運転していて不安に感じて始めていたのは事実である。
 また、足腰の劣化は顕著だった。あれほど長距離を歩いていた脚力は何処へ行ってしまったかと思うほど弱くなっていて、少し歩くのも疲れを意識するほどの脚力になっていた。駅の階段などでも、エスカレーターやエレベーターを使うことが多くなり、そのことが、脚力低下を促進させるという悪循環に繋がった。加えて、介護生活を始めて以降は、車を使うことが殆どで、歩かなくなったことが影響したことは確かだった。それだけに、たまに歩いたりすると、何だかふわふわした不安定な状態になって、下手すると倒れるのではと思うくらいバランスを失いそうになることがあって、慌てて、何かに捉まったりした平常に戻るのを待つようなことを経験することが増えていた。それは、明らかに、貧血症の典型であって、危険が間近に迫っている状態にあると思われた。
 一方の腰についても、ぎっくり腰になるのではとの不安が付き纏ようになっていて、少し重いものを持ち上げるのも、また、長く座ったりしていても、腰の不安を意識するのだった。それだけに、雅子を見舞っていて、たまにする抱き上げ作業や、通院時での車への乗降作業はとても厳しいものになっていた。
 また、以前からもあって苦労していたのだが、喋ろうとすると咳がでる症状である。聞いている相手の方には気分的にいいものではなく、ずっと気にしていた症状で、それが、ここに来て激しくなってきているのである。
 いずれにしても、何事においても、自信が薄らぎ、不安が先行する毎日で、雅子の介護にも、施設へ通うことが精一杯の状態になって来ていた。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(219) 8月14日分
 この日の雅子は元気がなかった。口数も少なく、声がほとんど出ていなかった。一考の帰り間際にはベッドに横になるというので、そうしてやった。少し弱っているのが気になる。

607 大津市出身者に二つ目の銀メダル

 今朝のテレビでの紹介まで失念していたのだが、昨日、フェンシングで日本人初の銀メダルを獲得した太田雄貴選手が、筆者の地元の滋賀県大津市の出身者であることだった。そういえば、先日、いつもお世話になっている近くの電気屋さんが「応援しましょう」というビラを持ってきてくれていて、それに簡単な紹介が出ていたのを思い出し、急遽、それを引っ張り出して確認したところである。
 同氏は平安高校から同志社大学を出て、京都クラブに属しているが、実家は大津市内にある。平安高校時代にはインターハイで3連覇を達成した逸材で、この快挙で、フェンシングファンの裾野拡大に大きなインパクトとなるはずだ。
 これで、先日の男子体操団体の中瀬卓也選手(栗東高校、日体大出身)の銀メダルと合わせると、大津市出身者が二つ銀メダルの獲得となった。滋賀県民としても、この二つの銀メダル獲得を大いに誇りにしたい。大したものじゃないか。オリンピック史上では初めてのことだと思う。
 大したものといえば、昨日の日本人選手も良く頑張った。女子柔道の上野雅恵の2連覇、水泳男子の松田丈志の銅メダル、それに、体操女子団体も大健闘で5位入賞を果たして、日本のオリンピックのファンを喜ばせてくれている。まあ、いろいろあるが、暫くは、オリンピックの興奮に酔ってみるのもいいのじゃないか。

2.連載(572) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(201)
  第六章 真夏の夜の夢(4)

(1)厳しい告知(その4)
 そんなやり取りがあって、その時点で、とにかく、不整脈を治すための可能性のある治療を幾つか施してもらったのだが、結果的には、どうにも治らず、まさかの場合の脳梗塞を避けるために、血液を固まり難い状態に保つためのお薬、ワーファリンをずっと飲み続けなければならないという厄介なことになった。
 そんな訳で、病気に関しては、一考は、この不整脈が唯一のもので、一病息災ではないが、それ以外については自信を持って生きてきていたのだった。
 しかし、その後、ちょっと心配なことも二度ほどあった。一度目は、三年半ほど前のことだったが、右手の指先がしびれ始めたことがあった。人差し指から始まり、親指、中指までしびれが進んだ時には、雅子の二の舞ではとの心配につながり、大いに胸を痛めたのだが、幸いなことに、そのしびれは数ヵ月後にはすっかりとひいて、元の状態に戻ったのだった。一考はほっとして愁眉を開いたのを覚えている。
 二度目は、不整脈でお薬を飲んでいることが影響することを肌で感じたことだった。それも三年ほど前のことだが、母親の夕食を作っている時に、うっかり指先を少し切ったのである。困ったのは、それまでと違ってなかなか血が止まらない事態になったのである。血液を固まり難くしている訳だから当然なことで、それまでにも、そのことを心配していたのだが、いざ、実際にその場になると、やはり少し慌ててしまい、近所のお医者さんに駆け込み、数針縫ってもらうことになった。
 まあ、そんな程度のことであって、大きな病気になることもなく過ごして来ていた。しかし、古希を過ぎた頃から、脱力感を感じるようになり、何となく食欲も進まなくなる日もあって、少し不安を覚えるようになっていた。そんな時に、同窓会での医師である友人と顔を合わせたのである。その際の友人の強い勧めもあったことから、そんな不安を一掃するために、一度、きちんとした検査をしてもらうことにしたのだった。しかし、一考のそうした安易な思いは裏切られ、その検査の結果が、思いもよらない告知となったのである。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(218) 8月13日
 この日の訪問中に、雅子が急に痛みを訴え、ベッドに横になりたいと言い出した。身体のどこかの部分が痛いというのだが、それが何処なのだか分からないまま、急いでベッドに担ぎ上げて横に寝かせた。暫くして、幸いにも痛みが治まった。どうやら、長く椅子に座っていて、お尻が痛くなったのかもしれない。そう言えば、先日も、そんなことがあった。相変わらず、コミニケーションで苦戦している。

605 スイムオフ

 鮮やかな一本での谷本歩実選手の連覇はまさに快挙そのものだった。「うれしいという言葉に尽きます。一本に拘る柔道に拘って戦ってきました」インタビューに答える谷本さんの顔は輝いていた。
 このほかにも体操男子団体の銀も立派だったし、ソフトボールも接戦を制したのも良かったが、一番驚いたのが、女子サッカーのなでしこジャパンだった。前回金メダルのノルウエイが相手で、劣勢が伝えられていただけに、5−1という大量点での勝利のうれしさは格別で、決勝トーナメントでの活躍に期待が高まった。また、水泳では北島康介選手の200メートル平泳ぎ予選、男子800メートルリレーでの日本記録を大幅に縮めて決勝進出sっを果たしたのもお見事だった。
 この日、「スイムオフ」という言葉を耳にした。どうやら、ゴルフでいうプレイオフと同じ延長戦のことのようだ。昨日の女子200メートル個人メドレーの予選で、決勝への8番目の椅子に、二人が同タイムと並んだ結果、その二人による決戦レースが行なわれたのである。ここで、日本選手の北側麻美選手が日本新を出して決勝に勝ち残ったのは素晴らしく、明るい顔でインタビューに答えていたのは、実に気分のいいものだった。
 なお、柔道では「ゴールデンスコア」という方式を使っている。これは、ゴルフのサドンデスプレイオフと同じ意味である。長引く戦いへの勝負の決着の付け方にも、いろんなやり方がある。先日話題になった野球のタイブレーク方式もその一つである。
 そう言う意味では、政治の世界にも、なかなか決着がつかない課題には、この種の方式が必要だと思う。日朝会談はその典型で、このスイムオフのような方式で、はっきりとした決着をつけて欲しい。昨日の日朝の合意では、秋までに拉致被害者の再捜査を終えるとしているが、またいい加減な芝居をしているようで、期待できるような感じがしない
 一方、福田内閣の場合も、このあたりで、民主党とこのスイムオフならぬ「政治オフ」で決着を着けてみてはどうか。今の福田内閣は、残念ながら、それどころか、政治から、オフタイムを取っているように見える。政治にオフは許されない。
 それにしても、無念なのが、期待の女子マラソンで、野口みずきの欠場が決まり、「みずきオフ」のレースとなったことだ。本人が一番無念だろうが、指導者の責任も問われなければならない。

2.連載(571) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(200)
  第六章 真夏の夜の夢(3)

(1)厳しい告知(その3)
 それまでの一考は、幸いな事に、持病の一つである不整脈を除いては、大きな病気とは無縁だった。そして、この不整脈も、2005年の暮に、何気なく受けた生活習慣病の検査で異常が見つけられて、専門医の紹介を受けて看てもらった結果、大変な病気だとの指摘を受けたのだった。
 しかし、一考にしてみれば、それはずっと昔から住み着いている悪さをしない持病だと認識していたし、実際に、そのことで心配になるようなことは何一つなかったので、その医師の大袈裟な指摘に何か大きなギャップを感じていた。
 その時、その診察に当たってくれたのが大東医師だった。その時の同氏の指摘は、いかにも仰々しく、一考が大変、危険な状況にあると訴えた。もう、6年も昔のことになるが、その時のやり取りがあまりにも刺激的であったので、一考の記憶の中には、今も印象深く残っている。
 「これは、大変です。あのジャイアンツの長島監督が倒れられた時と同じような危険な状態で、いつ脳梗塞で倒れてもおかしくない状況ですよ」初めて診察した患者への言葉にしては大胆すぎるのではないかと思うぐらいの厳しい言い方だった。しかし、その時の一考には、既に自分には不整脈が相当前からあって自覚していたこともあったので、この大東医師の脅かすような言い方にも、それほどの深刻さを感じてはいなかった。
 「そんな切羽詰まったことはないと思いますよ。それというのも、自分は、この4年間は、存分に歩きを楽しんでいて、その間におよそ3000Kmほど歩き回っているのですよ。今年の夏には、琵琶湖一周を5日間で歩きました。特に、どうってことはありませんでした」事も無げにそう言った一考に、先生は、少し訝しげに首をかしげて、それまでよりも、厳しい口調で付け加えた。
 「それは、あくまでも、ラッキーだったということでしょう。ともかく、無理をされない方がいいと思いますよ。今の診断から見る限り、危険は直ぐ傍にあると申し上げておきます」大東医師の言い方に、一考は、この先生はかなり大袈裟に言う方だなあと思ったのが印象に残っている。いずれにしても、今回の悪性の直腸がんの告知とは、その緊迫度において、雲泥の差があった。(以下、明日に続く)

3、速報、昨日の雅子(217) 8月12日分
 2時前に、静岡にいる筆者の妹親子を連れて施設を訪ねた。そして、久し振りに雅子を屋上へ車椅子で連れ出して外の空気を吸った。体調は、まずまずの様子。頑張っている。

605 絶句、涙に感動あり

 やはり、その時は2画面テレビで二つの生中継を見て興奮していた。昨日のお昼前のことだった。一つが、バドミントン女子ダブルスの準々決勝で、末綱聡子、前田美順ペアが、世界ランク1位の中国チームに挑んでいた。今一方は、北島康介の金メダルを賭けての決勝レースだった。
 バドミントンでは、第1セットを見る限り、相当な力の差が見えて、やはり及ばないかなあといった具合だったが、第2セットになって、日本チームの頑張りが目立ち始め、遂に土壇場でジュースに持ち込み、そしてそのセットを奪った。
 ちょうどその頃、北島のレースが始まり、堂々と世界新で金メダルをものにした。期待通りに勝つほど難しいものは無い。その興奮が冷めやらない中で、バドミントンの第3セットが終盤を迎え、一進一退の中で少しずつ差を広げて行き、遂に勝ち切ったのである。最後のポイントを奪った瞬間、二人はコートに伏して涙していた。言葉にならない感動的なシーンだった。筆者も、最後の数ポイントには興奮して立ったままテレビに見入っていた。世界ランク1位の選手でも、追い込まれた最後はミスを連発していたが、そこに人間らしい側面を見たように思う。
 金メダルの北島康介選手がインタビューに涙で絶句していたシーン、末綱、前田ペアが勝利の瞬間にコートに伏して涙したシーンには、相通じるものがあり、本人にしか分からない込み上げるものがあったのだろう。演技ではなく純粋な素直な人間性を見せてくれたようで、そこには、汚れのない輝きがあって、今まで以上の感動を与えてくれた。
 勝負ことでは勝ち負けがあるのは致し方ないが、総じて日本選手もよくがんばっていると思う。この日の柔道、テニス、それに美人ペアのおぐしおなどは残念な結果だったが、射撃の中山由起枝さんの4位入賞、ファンシングの女子の菅原知恵子選手の7位入賞は、いずれも日本初であり大健闘だった。
 それよりも、もっと頑張って欲しいのが、福田内閣や日朝会談での日本チームだ。昨日から始まった日朝会談で、齊木昭隆外務相アジア太平洋局長から拉致問題の扱いについて改めての提案をしたようだが、果たして返事をして来るのだろうか。今までの経緯からすれば、肩透かしするのが見え見えだ。こんな会談を続けているのに意味があるのだろうかとさえ思ってしまう。本当に、もういい加減に拉致問題には決着をつけて欲しい。不誠実な、いい加減な北朝鮮の態度をぎゃふんと言わせる手段は無いものか。国際社会からつまはじきにするしかないだろう。さすがに、米国も、北朝鮮のポーズだけの騙しのテクニックに気づいたようで、テロ支援国家指定からの解除は延期したようだ。暫くは、北朝鮮の出方を見守りたい。
 ところで、福田総理にとって、今、狙うべき金メダルはなんだろうか。国民の支持を回復することだろうが、そのために何をやればいいのか、その迫力が全く感じられないのが、歯がゆくて仕方ない。

2.連載(570) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(199)
  第六章 真夏の夜の夢(2)

(1)厳しい告知(その2)
 「正直言うと……」とそう切り出した友人だったが、そこまで言って一旦口をつぐんだ。一瞬、部屋の中が緊張した雰囲気となった。一考も、何となく、ぎこちなく感じながら、友人の顔に改めて視線を送った。
 「実は、どう話していいか、少し躊躇してるんだけど、君との間柄なので、何事も包み隠さず、本当のところを話させてもらうことにしよう」友人は改まって、少し固い口調で言葉を繋いだ。一考は、その固い雰囲気から逃れるように、ゆっくりと診察室の中を見回した。そして。改めて気づいたのだが、その部屋には看護婦さんの姿も見えず、二人きりだった。一考は、それまで自分の中にあった和やかなものが、急に何か違った雰囲気に変わってゆくのを意識するのだった。そして、友人の真面目そうな応接振りに改めて目を遣り、この段階では、余計なことは言わぬ方がいいとの思いで、そのまま彼の次の言葉を待った。
 そこで聞かされたのが、悪性の直腸癌に侵されているという予期しない厳しい告知だった。しかも、この段階では、手術による切除は困難だというのである、つまり、手遅れだというのだ。さすがに、一考は直ぐには言葉にならなかった。じっと彼の言った言葉の意味を噛み締めながら、自分の気持ちを整理するかのように、何が起きているのかという事態の実態を理解するために、暫し考えを巡らせていた。
 やがて、気持ちが落ち着き始めた一考は、改めて、自分の余命がどの程度なのかと、思い切って踏み込んで、その深刻さを確認した。その時、一考は舌の動きが少しもつれているように感じていたが、それでも、精神的には意外にも、それほど混乱することも無く落ち着いていた。。
 「厳しい答えで申し訳ないが、長くて一年ぐらいだろうね」少し考えるような仕草で、声を絞り出すように友人は教えてくれた。
 一考は、その厳しい返答内容にも静かに黙って頷いていた。事前の自覚で、多少の気掛かりな面が無くは無かったのだが、これほど厳しい結果が出ているとは思ってもいないことだった。しかし、不思議なことだったが、そんな深刻な告知にも、驚き、不安、狼狽とか、動転とかいったものはほとんど無く、どうした訳か驚くほど冷静に受け止めていた。 
 一般的に、とんでもない驚きが先行すると、人はよく頭が真っ白になるといった表現を使うが、一考には、こんな大変な告知にもそんな言葉とは全く無縁だった。いわゆる、デジャブといわれる感覚に似たものが一考の頭の奥深くに存在しているかの様であった。
 一考の胸中には「そうか、そこまで来ているのか」といった何となく納得したような気分になって行くのが不思議だった。そして、余裕というか、ゆとりというべきか、そんな言い難いことを、隠すことなく話してくれる友人に感謝する気持ちが一考の頭の中を支配していた。
 「有難う、あなたの友情に大いに感謝しているよ。これからの限られた生活になるが、どう生きるべきか、お知恵もお借りすることになるかもしれないが、その時には宜しく頼むよ」一考は、複雑な心境でそう言いながら、友人に微笑みかけた。そんな非常事態を知らされた直後であっただけに、その応接は、世にも不思議な落ち着いた光景であったと言える。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(216) 8月11日分
 この日は珍しく、おやつにアイスクリームを少し口にした。口の開き具合もいつもよりも大きく、またお茶を飲むストローのスピードも少し速いように思え、体調が少しいいのではと思われた。そして、入居後、初めて二日連続の通じ(正常)もあって、ほっとするのだった。

604 2画面テレビで楽しんだ

 「やっちゃいました。これが僕の仕事です。」と明るくインタビューに答えた柔道の内柴正人選手のオリンピック2連覇で、今大会で日本に初めての金メダルをもたらし、初日のもやもやを吹っ飛ばしてくれた。一方の女子柔道では、中村美里選手も銅メダルとよく頑張ったが、本人は、金メダルでなかったと残念がり、「次に」と決意を示し、表情を強張らせていたのが印象的だった
 この外にも、この日は女子体操団体、バドミントンのオグシオ、水泳の北島康介、女子ホッケーなどは順調に勝ち進んだが、バレーボール男子は初戦のイタリア戦には完敗、サッカー男子はナイジェリアに敗れて、予選敗退が確定したのは残念だった。この中では、話題の美人コンビのオグシオこと、小椋久美子、潮田玲子が、第一セット前半で大きくリードしながら、中盤で、なんと11ポイント連続落とすという苦しい場面があり、逆転でそのセットを落とした。やはり駄目なのかと思わせたが、そこから、何とか立ち直って勝利したのは立派だった。美女も勝って初めて本当の美女の輝きを発揮する。今日も勝ってもっと輝いて欲しい。
 これだけの多くの種目を見る方も大変で、改めて、2画面テレビの便利さを思った。ちょうど夕方の7時過ぎには、柔道の準決勝、決勝が始まり、6時頃から始まっていたサッカーが同時並行的に行なわれていた。これを柔道を主画面(フジテレビ)で、サッカーを副画面(BS1)で見ていたが、内柴選手の金が確定すると同時に、副画面にそのテロップが流れるといった生中継の醍醐味を楽しんだ。
 話は飛ぶが、考えてみると我々の毎日の生活は、2画面といった単純なものでなく、マルチ画面で進行している。しかし、具体的なアクションは一つの画面でしか行なえないので、筆者は「一つずつ」というのを、最近の生活のモットーにしている。しかし、同時並行的に、裏の他の画面の進行具合を考慮しながら、必要な手を打っておくことは必要だ。筆者の場合も、自分のことのほかに、雅子のこと、母親のこと、更には息子達のことなどのことにも必要な気遣いをしながら一生懸命に頑張って生きている。
 政治だって同じで、財政のことに配慮しながら、必要な経済対策を考え、社会保障体制の見直し、さらには拉致問題、毒ギョウザなどの問題などなどと併行して取り組んでいる。政治はチームで戦えるので、個人一人で戦うのとは違う。しかし、その陣頭指揮を執る総理は一人だ、どれだけ多くのマルチ画面にタイムリーに決断し、対応しているかが、国民の幸せに直結しているから、頑張ってもらわねばならない。
 さあ、今日も、マルチ画面での生活に抜けが無いように手を打ちながら、2画面のテレビでオリンピックを楽しみたい。今日は、午前中に水泳の北島、夕方には柔道の男女のの金メダルに期待している。頑張れ日本!!


2.連載(569) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(198)
  第六章 真夏の夜の夢(1)

(1)厳しい告知(その1)
 友人の医師から検査結果だ出たので来てくれないかとの連絡を受けたのは、2011年5月の連休をおよそ一週間後に控えた日の午後だった。いつもながらの真面目な彼の口調での呼び出しに、一考は特に気にすることも無く、大津市内にあるその病院に向かった。好天に恵まれていて、さわやかな夏の気配が感じられる日であった。
 一考が久し振りにその友人に会ったのは、2ヶ月ほど前に行なわれた高校の同窓会のパーティでの席上だった。中学校からの友人で、勉強だけでなく、運動にも優れた才能を持っていて、いわゆる何でもできる優秀な男だった。その後、彼は大学では医学部に進学し、卒業後もしばらく大学の研究所に席を置いていたが、10年ほど前に親父さんの後を継ぐ形で開業医に転進していた。その彼とそのパーティの席上で何気なく話したことが切っ掛けで、一考は健康診断を受けることにしたのだった。
それというのも、難病で苦しむ妻雅子の介護に明け暮れて5年が経過し、自分の健康に気遣う時間も無く走ってきていた生活ぶりを口にした際に、彼が年も年だから一度検査しておいた方がいいよと勧めてくれたのである。そういえば、何となく身体がだるく感じるようになっていたこともあって、それほど深刻に考えることなく、彼の勧めに応じたのだった。一考にしてみれば、今後、どれだけ続くか分からない妻の介護を続けるには、この辺りで、一度しっかりとした検査をして、健康に自信を持っておきたいと考えたからである。しかし、そうは言うものの、何となく気掛かりなことも無くは無く、何らかの異常が見つかるかもしれないという不安も頭の片隅には潜在していた。
 その友人から電話を受けた一考は、その日の夕方、検査結果を聞くために彼の病院を訪ねた。他に誰も患者がいないタイミングで、直ぐに診察室に入った一考は、医師である友人と軽く挨拶を交わしながら、彼の前にある患者の椅子に向かい合った形で座り、改めて友人の顔を見た。少し前の同窓会で会った時に見た屈託ない表情とは違って、きっと引き締まったその表情には、さすがにプロの医者だと思わせる重みが感じられた。そして、それにつられたように、一考も、そっと気を引き締めるのだった。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(215) 8月10日分
 雅子には、特に変わったこともない安定した一日だったようだ。オリンピック放送が始まっているが、この日の午後は、読売テレビで、いつもの「たかじんのそこまで言って委員会」を一緒に見た。三宅久之さんと田島陽子さんのいつもの応酬、それに久し振りに登場した元警視庁刑事の北芝健氏の話題になった事件への自らの見解を披露するファンタジーは、相変わらず味があって楽しめた。雅子もこの番組は好きな一つである。
 三日ぶりに通じもあって順調、少し大人しい? のが気になったが。

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