プロフィール

Author:相坂一考
滋賀県大津市出身
07年1月に推理小説「執念」を文芸社から出版

このブログは3部康成です。1部が「コラム」、2部が連載「難病との闘い」、そして3部が、速報、「昨日の雅子」です。

 

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597 夢は叶わず

 最終日の最終組で不動祐里選手が、その一組前に宮里藍選手が廻るという異例の展開となった全英女子オープンゴルフは、31年ぶりに樋口久子に次いで、日本人選手のメジャーツアー制覇が期待されたが、残念ながら、その夢は叶わなかった。結果は、不動がトップと4打差で3位タイ、宮里が5打差で5位に終わった、また、上田桃子選手も頑張って7位タイに食い込んだ。優勝は、韓国の20歳の若手の申智愛選手で、女子ゴルフ界での韓国勢の層の厚さをここでも発揮した結果となった。それでも、ベスト10に日本人選手が3人も入ったのは、メジャーツアー史上で初めてのことで、今後の活躍期待に望みを繋いでくれたと言えよう。  
 試合後のインタビューで不動は相変わらず、謙虚に順位には拘っておらず満足だったとコメントしていた一方で、宮里藍選手も一時のスランプから脱却できて、海外での初優勝に自信を得たようだった。上田桃子は、自分の目標に今一つだったが、明るく来年に向けて抱負を語っていて、三人三様の応接ぶりは面白かった。
 意外だったのが優勝した申選手の告白で、落ち着いた堂々としたプレイ振りの裏に、昨夜はなかなか眠れず不安だったという。やはり、大きな戦いでは、精神面での戦いで、誰もが見掛け以上に苦しむようだ。選手の苦しみはともかくとしても、ファンである筆者も、その一つ、一つのプレイにドキドキしながらの観戦で、夢が叶わぬ結果に、眠気を伴った疲れがどっと出て来て重い気分に追いやられた。自分のことでもないのに、何で、そんなに拘るのと思いながら、勝負の行方に夢中になっていたのだ。馬鹿馬鹿しい話かもしれないが、ファンって結構疲れる存在なのである。それでも、不動ファンとしては、アンチファンの対処対象である宮里藍選手が、最後のホールでダボを叩く失敗をしてくれたことで、不動の順位が土壇場で逆転して、日本人選手でトップで終わったことが、せめてもの救いであった。
 さて、話は変わるが、ファンと云う立場では、筆者にとっては、昨夜は厄日だったと言える。将棋の世界でも、筆者の大の贔屓の郷田九段が、昨夜行なわれたコンピューター対局での最強戦の準決勝で、渡邉明竜王に敗退した。この棋戦は、昨年新設された新しい棋戦で、昨年は堂々優勝していただけに、連覇叶わず、吹っ切れない夜となったのである。郷田九段は、今年も各棋戦でそれなりに頑張ってきているのだが、七大棋戦の棋聖戦、王座戦では、いずれも、挑戦者決定の最終トーナメントの準決勝で無念の敗退をしている。今週末には、竜王戦の挑戦者決定戦の準決勝が行なわれるのだが、この鬼門の準決勝を何とかして制して、先に進んで欲しいと願っている。
 ところで、政治の世界では、改造福田丸が始動し始めたが、小泉さん退陣後は、筆者にはファンと云うべき政治家は、今のところ不在である。今や、国民的に人気のある麻生太郎氏の存在が注目されている。火中の栗を拾う形で重要ポストの幹事長に就任した同氏だが、果たして、優勝と云うべき総理への勝ち筋はあるのだろうか。じっくりと、秋の政局に注目したい。

2.連載(562) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(190)
  第五章 施設生活半年を終えての総括(28)

(4)小さな幸せの事例(その6)
 F お薬の効き
 大津市内の日赤病院で、パーキンソン病ではないかとの診断を受けた雅子が、それ用のお薬を飲み始めたのは、02年11月頃だった。今から6年前のことである。その後1年ほどして、自らの決断で、今、お世話になっている吉田病院に替わった。この道の専門医である春日医師にお世話になりたいと考えたからである。改めての基礎検査の結果、その1年後に、春日先生からも、やはり、パーキンソン関連病だとの告知を受けたのが、04年10月頃で、ほぼ4年前のことだった。
 その後は、雅子の症状に適合するお薬を求めて、この病気用に開発されているお薬を、春日医師の知見に基づいて、雅子の症状に適合する組み合わせ、配合比を求めての検討が開始された。それには、絨毯爆撃的な忍耐強い検討方式が採用された、時間を掛けての最適配合探索への執念のアプローチであった。
 最近になって使い始めた新しいお薬に、今までにない効い目と思われる反応があって、その服用量の検討に入っている。やっと雅子に合うお薬に巡り会えたのではとの思いで、少し愁眉を開くと言った気持ちもあって、小さな幸せを感じ始めていたのである。しかし、この場合、効いているといっても、病気が治るといった類ではなく、悪化のスピードが弱まるとか、少し身体が柔らかくなるといった程度の効き方である。それでも、うれしさを覚えたことには変わりない。
 とにかく、この6年間は長い道のりで、雅子の症状が大きく悪化した期間でもあった。その間、服用したお薬の種類、量は半端じゃなかった。種類も段々と増えて来ていて、今では8種類のお薬を一日、朝食、昼食、夕食後と就寝前の4回に分けて服用している。この病気の厄介なところは、一般的には、一旦飲み始めると止めるのが難しいという傾向にあることだ。8種類のお薬を全部合わせると、1日、1グラム程度は飲んでいるのではないかと思うぐらいの量である。飲み始めて通算で5年ぐらいになる訳で、そのトータルの服用量は20Kg近くになっているのでと思われる.それだけのお薬を服用すれば、その副作用だけでも大変だと思われるが、病気の進行の中での見分けは殆ど不可能である。要は、トータルでの結果でしか判断できず、そんな中で、少しでも効果があると分かれば、ほっとしたりして、一喜一憂するのである。大袈裟なようだが、そんなところで、小さな幸せを見出そうとしているのである。
 服用するものには、その他にも、薬の範疇に入らないが、便秘用に繊維の粉末を服用している。これも常態化していて、今では欠かせない毎日の服用となっている。とにかく、この繊維の効果に頼って、通じのリズム確保に懸命の毎日なのでもある。(以下、明日に続く)

3、速報、昨日の雅子(208) 8月3日分
 午前中に雅子の育ての母親の13回忌の法要が京都のお寺であったので、それに顔を出して、その足でドリームスペースに顔を出した。前日と同じで口数は少ない。雅子のユニットでは3時頃から、8月生まれのお二人のためのお誕生会があった。雅子も顔を出して雰囲気を楽しんだ。

581 大きな夢にじわじわと

 昨日行なわれた将棋の棋聖戦で、挑戦者の羽生が佐藤棋聖に勝って、棋聖位を奪取し、羽生は4冠に返り咲いた。出だし2連敗からの3連勝で逆転での見事な返り咲きだった。これで、今、併行して行われている王位戦で、昨年失冠した王位を奪回すると5冠に復帰する。更に、今年の10月後半から始まる竜王戦では、目下、最終予選を戦っていて、順調に勝ち抜けば、再び、羽生7冠の夢が現実味を帯びて来る。将棋ファン、羽生ファンには堪らない展開が続く。
 そうは言っても、7冠に至るにはまだまだ大変だ。先ずは、間もなく始まる王座戦、更には、来年1月からの王将戦でのタイトルの防衛が前提で、加えて、2月から始まる7冠目の棋王戦の挑戦者になって、棋王を奪う最後のステップが待っている。その棋王戦は、今、その予選が始まったばかりで、先行きは半端な道のりではない。棋王戦では、途中で敗者復活戦もあるが、基本的には、予選の段階で1敗でも喫すれば、そこで全てがパーになり、また一年先を待たねばならない。恰も、不安定な積み木を組み立てる作品作りに似ていて、大変な努力の積み重ねと妙手の発掘が欠かせない知的な作業の連続なのだ。
 大記録といえば、大リーグのイチロー選手の8年連続レギュラーシーズン200本安打や、阪神、金本選手の連続試合フルイニング出場というとてつもない記録が、毎日積み重ねられているが、これらの記録は、ここまで来れば、仮に、不幸にもストップすることになっても、そこまでの記録は厳然として光り輝くのだが、羽生名人が描いている七冠の夢は、どこかで一敗すれば、そこで一旦、全てが崩壊するという意味で、大変な難しさがあると思う。羽生ファンとしては、そのスリルを楽しみながら、再び7冠を獲得する道程を楽しみたい。
 
2.連載(546) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(174)
  第五章 施設生活半年を終えての総括(12)

(1) 生活リズムの変化(その12)
 人間、誰しも、気分転換の意味で、何かの楽しみを持つことは大事である。雅子が元気な頃は、友人との付き合いも多くあって、楽しみ方も多彩だった。それでもテレビは、そのウエイトが小さくない一つだったことは確かである。
 今、こうして、病気の症状が進み、自分での動きが取れなくなると、他に楽しみがなくなり、テレビは唯一の楽しみになっていると言える。姿勢が少し前傾になっているので、テレビを見るのも楽ではなさそうだが、今のところ、それ以外の楽しみを見つけるのは難しい。そういう意味では、施設でいろいろと企画してくれている気分転換への配慮は大変有難い。
 かつて、自宅で一考の在宅介護を受けていた頃は、右手の指も多少動いて、テレビのキーパッドのボタンを自分で押すことが出来たので、自分の好きな時に、好きな番組を見ることが可能だった。しかし、身体を自由に動かせなくなった上に、指の動きもままならなくなった今では、それも全くできない。必要な時に、その都度、誰かにチャネルを押してもらわねばならない。昼間、一考がいる場合を除くと、介護士さんが雅子の意向を慮っていろいろと気遣ってくれている。言葉がうまく通じないこともあって、希望するチャネルになっていないこともあるが、それは致し方がないとして、映っているものを見ることになる。
 雅子が施設に入って衝撃を受けたと思われるのは、就寝時間が午後9時で、いわゆる大人のゴールデンタイムの番組を見られなくなったことだったと思う。その時間帯は、いわゆるトレンディドラマやちょっとした内容のある大人の番組が目白押しで、それらを楽しんでいただけに、それからシャットアウトされたのだから、大いに戸惑いがあったはずだ。しかし、施設でのルールということであれば致し方がない。その点での雅子の対応は立派だった。そんな不満は微塵も口に出さずに、自分をしっかりと制御し、自らに言い聞かせたのだろう。
 従って、夕食後の雅子の楽しみは、7時から9時までのテレビ番組だけとなる。最初の頃は、一考が雅子の希望を聞いて、帰り際に介護士さんに「何チャンネル」にしてあげて欲しいと伝えて帰るようにしていた。
 最近では、テレビの前に、チャネル予定表を置いて、そこに雅子の希望する時間毎のチャネルを表示することにした。こうすることで、雅子の希望を忠実に反映できる仕組み(大袈裟)で対応してもらっている。(以下、明日に続く)

3.速報、昨日の雅子(192) 7月18日分
 9時半に入浴、その後、マッサージ。、この日も比較的穏やかな一日。雅子は、じっと堪えて頑張っている毎日だ。幸い、他の病気が併発することもないのは有難いことだ。「堪えて生きる」それが今の雅子の「小さな幸せ」である。

448 19年目の春

 将棋界も、この3月は年度末で、昇級、昇段に関わる順位戦が各クラス共に最終局を迎える。ご承知の方も多いと思うが、この順位戦は名人戦に繋がる棋戦であり、加えて、棋士の基本給と連動している。それだけに、棋士が最も重要視している棋戦なのだ。あの「将棋界で最も長い日」としてNHKが生中継して取り上げたような悲喜こもごものドラマが各クラスで展開される。
 昨日行なわれたB2クラス(将棋界には、A,B1,B2,C1,C2の5つのクラスがある)で、屋敷伸之九段が念願のB1級への昇級を果たした。生憎、昨日の対局では敗れたが、競争相手も敗れたことでのラッキーな昇級だった。
 同氏は、プロになって直ぐに18歳6ヶ月でタイトルを奪取(この記録は今でも破られていない)するなど、お化け屋敷と言われて、順位戦以外の棋戦では大活躍をして来ていて、既に九段の称号を得ているのだが、どうしたことか、この順位戦では星に恵まれず、C1クラスでは、何と14年も足踏み、このB2クラスでも今年で4年目でのやっとの昇級だった。プロになって、何と19年かかってのB1クラスである。かくして、やっとA級が視界に捉えられた訳で、名人位を目指してのこれからの活躍を期待している。
 世の中には、力があっても、肝心な試合に勝てない不運な人も多い。しかし、それでも、努力して頑張れば、やがて春が巡ってくる。筆者も、19年目の春を迎えた同氏に、おめでとうと申し上げたく、名人戦中継の応援掲示板にメールを送った。
 
2.昨日の雅子(64)
 午後の入浴が終わって一段落した2時半頃、雅子の長兄夫婦に次姉の伸子さんの見舞いを受けた。兄夫婦は1ヶ月に一度の頻度で来てくれている。伸子さんは久し振りの訪問だ。雅子の顔も嬉しそうで、楽しいひと時を過ごしていた。やはり、血の通った兄妹ならではの安堵感が滲み出ていた。平穏な一日。

3.連載(413) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(39)
  第二章 年末年始は自宅で (その1)

 雅子が施設に入居して最初の年末年始は、入居3週間後にやってきた。一考にとっては満を持しての介護生活の再開となる。二年近く続けていた雅子への介護から解放されて、多少の寂しさを覚え始めていたタイミングだった。
 とにかく、正月期間ぐらいは、少しでも温かい家庭での生活を楽しんでもらおうと考えたのだった。しかし、そこには一考の予期せぬ悲喜こもごものドラマが展開されることになる。その辺りについて紹介をしてみたい。

(1)年末の慌しさ(その1)
 繰り返すことになるが、一考がこのドリームスペースとの入居契約を急いだ背景は、若しかの時に、つまり、急に施設への入居が必要となった時のことを考えて、その入居権を確保して置くことの必要性を考えていたからである。というのも、急に、探して見ても、直ぐに入居できる施設を見つけるのが難しいと聞いていたからだった。
 そういうことで、ドリームスペースに入居を決めた時点では、雅子の介護に関しては、軸足は施設に置きながらも、出来れば半分ぐらいは自宅で過ごさせ、自分が介護をすることを念頭に置いていた。そこには、まだ体力的に自分で介護を続けられるという自信があったし、雅子にも家庭の温かさを感じてもらいたかった。加えて、そうすることで、経費も多少は軽減できるからとの計算もあった。
 そんな訳で、雅子が、昼間座って過ごすためのマッサージ付きの大型の電動椅子もリビングに残したままにしていたし、寝室のベッドもリースが出来なくなるというので、新たに電動式のものを購入していた。また、トイレの握り棒のついた型枠も、リースから購入に切り替えて設置していて、雅子がいつ帰って来ても、ここでの生活が続けられるように準備していた。
 こうして、12月30日を迎えた。一時帰宅の日である。このタイミングは、入居して、3週間目に入っていて 漸く、雅子が施設での生活に慣れ始めた頃で、この一時帰宅が、適切なタイミングかどうか、一考も多少は躊躇していたのだったが、やはり、当初の予定通り、年末年始ぐらいは自宅で一緒に過ごす方がいいと考えて、施設でいう「外泊願い」を申請していたのだった。
 生憎、この日は、朝からどんよりと曇っており、時々小雨が降っていて、何時、雪に変わるかと思われるような寒い日だった。(以下、明日に続く)

タグ : 屋敷伸之

444 羽生王座王将が名人戦挑戦者に

 5局同時に行なわれたA級リーグ最終戦の将棋を満喫した一日だった。朝10時に始まった戦いの全てが終わったのは、何と今朝の3時前で、筆者も朝起きて結果を知ったのである。
 結果は、羽生王座王将の3年ぶりのの名人戦挑戦、久保八段のA級からの降級、そして来期のA級の順位は2位が三浦八段、3位が筆者の贔屓の郷田九段と決まった。
 この日の圧巻は、降級の危機にあった佐藤棋聖の頑張りだった。終始有利に進めていた佐藤棋聖だったが、脅威の粘りの木村八段が終盤で一旦逆転、しかし時間に追われた木村八段が勝ちを逃し、辛うじて佐藤がA級の地位を守った。最後の数十手は互いに一分将棋の手に汗握る激戦で、佐藤棋聖の苦渋の顔が、次第に緩む変化のシーンを衛星放送のカメラは見事に映し出していた。素晴らしい戦いが他にも多くあって、本当に将棋を楽しんだ一日だった。
 この日の午後、将棋放送の合間をぬって雅子の部屋を訪ねたのだが、3時から始まった衛星放送の中継を見ていて妙なことに気が付いた。衛星放送の画面が、変な案内メールの映像で画面全体の40%ぐらいが邪魔されていて、肝心の部分が見にくいのである。そう言えば、先に俳句天国をここで見た時もそうだったと思い出したのだが、これが、一般にこの地区に放映されている案内だと思っていた。しかし、なかなか消えないので、何事かと思い、リモコンのスイッチをああでもない、こうでもないといじったが埒が明かなかった。半時間ぐらいして、やっとのことで、その解除方法が分かり、電話で然るべきところに連絡して取り除いてもらったのである。
 このテレビは、雅子が入居した際に新たに購入したテレビだったことで、事前にそんな手続きを必要としてようだった。なるほど、デジタル放送ならではの技術で、このようなことが出来るという。ならば、受信料未払いの方に適用すればいいのではと思った次第である。但し、そのことをよく説明してくれないと、ちょうど年金特別便の内容と同じで、一般の視聴者、国民には極めてわかり難く、その点での改善はしっかりやって欲しい。

2.昨日の雅子(61)
 ひな祭りで、昼食は散らし寿司。おかげさまで平穏。

3.連載(409) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(35)
  第一章 入居生活の始まり (その35)

(2)定着への試行錯誤 (その19)  
 「雅子、小沢さんだよ。ご主人様が車で送ってきて来られたんだよ。私が駅までお迎えしようと思っていたんだけど、その方が安心だからそうしてもらった」一考は、朝方、自分が連れて来ると行ったことを訂正した
 「雅子ちゃん、ごめんね。こんなに遅くなって、もっと早く来たかったんだけど」小沢さんは、部屋に入って雅子の顔を見るなり雅子に駆け寄り、抱きしめるようにしてそう言った。
 「有難う」辛うじて雅子はそう言って絶句した。それ以上の言葉が出てこないのである。
 「かわいそうに。どうして、雅子がこんなに苛められるの? いろいろとみんなのために尽くしてくれたのに。楽しかったよ。あなたがいつも盛り上げてくれていたし、いろんなところに連れて行ってくれたし、……」小沢さんも、半分、涙声だった。
 「神さんは、結構、意地悪なんですよ」傍で二人の様子を見ていた一考が口を挟んだ。
 「そうね。本当に、そうだわ」小沢さんも真面目な方のようで、一考の言葉に無条件で同意してくれた。
 「人間、いつ何時、どんな不幸が襲って来るか分からないものですね。私が、長い間、厄介なことを全て丸投げしてほおって置いた付けが回って来たのだと思っています」一考は、自嘲的にそう言って小沢さんを見た。
 「そんなことはないと思いますが、雅子ちゃんは、健康そのものだっただけに、信じられません。難しい病気だと聞いていますので、大変でしょうが頑張ってください」小沢さんは、話す言葉を選びながら、二人を勇気づけるのだった。
 その後、二人は、昔話に話題を移し、当時を偲んでいるようだった。何しろ、雅子が自由に話しできないだけに、小沢さんが多くを話し、雅子が相槌を打つと言うパターンでのやりとりだった。
 半時間余り話し合っていたが、やがて、小沢さんは「頑張ってね」と言って部屋を後にした。一考が一階まで見送りに階下まで同行した。残された雅子は、首を動かせないので、暫し、呆然として悲しげに正面の壁を見つめていた。(以下、明日に続く) 

タグ : 年金特別便 羽生王座王将 佐藤棋聖 久保八段 郷田九段 三浦八段

443 羽生、名人戦挑戦権獲得なるか?

 何年前からだったか記憶ははっきりしないが、NHKが「将棋界の最も長い日」として、名人戦挑戦者リーグ(A級リーグ)の最終日を中継してくれている。今年は第66期を迎え、今までにない長い放送時間枠を取って、10時から同時に始まる5局をしっかりと中継してくれるから、将棋ファンは堪らない。今日は一日将棋を堪能できるのだ。
 今年の見所は、楽しみは次の3点である。
 1.森内名人への挑戦者は羽生王座王将か、三浦八段か。 2.リーグ降格者のあと一人は、久保八段か佐藤棋聖か。 3、来期の順位はどうなるか。前年度挑戦者の郷田九段は2位確保なるか。
 放送は朝の9時40分から11時54分、3時から6時、そして22時45分から翌日の午前2時までの総時間は、8時間29分と随分と豪華である。じっくり、楽しんでみたい。(なお、対局は、羽生ー谷川、三浦ー久保、佐藤ー木村、郷田ー行方、藤井ー丸山の5局である。)
 ところで、昨日は、琵琶湖毎日マラソンのスタートを皇子山陸上競技場へ見に行った。この競技場に入ったのは、かつて短距離選手だった息子の次郎が高校生の時に応援に行って以来だ。好天に恵まれ、200人近いアスリート達の迫力ある息吹を目の当たりにし感動した。結果は、大崎悟史選手が見事に、対抗馬の藤原選手の記録を4秒上回って日本人選手で1位を確保、オリンピック出場権をほぼ手中にした。おめでとう。

2.昨日の雅子 (60)
 筆者の母親(95歳)と姉の久子がそれぞれ2回目の見舞いに訪れた。雅子も、懸命に、そして神妙に応接していた。精神的に疲れただろうと思う。

3.連載(408) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(34)
  第一章 入居生活の始まり (その34)

(2)定着への試行錯誤 (その18)  
 その翌朝、12月17日、夫はいつものように顔を出すと、嬉しそうに自分に話しかけて来た・
 「今朝、小沢さんから電話があって、お見舞いに来たいとおっしゃって、今日の午後にこられることになったの。多分、駅まで迎えに行って、お連れすることになるかもしれない。楽しみだろう」
 「小沢さんとは中学時代からのお友達なの。とても嬉しいわ。でも、こんな姿をお見せするのは辛いけれど、仕方ないわね。それよりも、あなたがお連れするなんて、大丈夫かしら」この日の、雅子の言葉は、多少はマシだが、それでも正確に聞き取るには聞き直しが必要で時間が掛かる。
 「それに、必ず、手ぶらで来て欲しいと強くお願いしておいたから。とにかく、此処まで顔を見せてもらうだけで十分なんだから」
 「有難う。何から何までお世話になって、申し訳ないわ」雅子は恐縮した様子で、一考の方に向かって頭を下げた。
 「夫として、当然なことだけれど、自分の車にお乗せするのは大丈夫かどうかが、ちょっぴり心配だけど」夫も、自分の運転技術についてはわきまえているようだ。
 「でも、随分と上手になったんじゃない?」雅子は、不安をよそに夫を持ち上げて、尽くしてくれる夫への労いを表そうとした。
  夫は、いつものようにコーヒーを飲んで一息つき、それからブログを呼んでくれて雑談をし、その友人を連れてくるために早目に一旦帰宅した。
 雅子は、此処まで友人が訪ねて来てくれるということで、いささか興奮していた。この老人ホームに入居することは、誰にも知らせないで置こうと思ってはいたが、それまで、親しくしていただいたお二人には、夫から電話で、此処に移ったことを連絡してもらっていたのである。今朝の一考の話は、まさに、その一人の方からの申し出だった。頭の中で、雅子は、連絡したことが良かったのか、却って、気を使わせえることになったのではと、心中揺れていた。
 昼食が終り、お薬、トイレが一段落して、自分の常席に落ち着いて間もなく、一考が小沢さんを伴って部屋に入って来た。雅子の目から思わず涙が込み上げて来るのを押さえることは出来なかった。(以下、明日に続く)

タグ : 琵琶湖毎日マラソン 大崎悟史選手 将棋界の最も長い日 森内名人 羽生王座王将 佐藤棋聖

432 矢内女流名人3連覇

 イージス艦事故、ギョーザ事件の続報がメディアを席巻、しかし、謎は解明されない苛々が続く一方で、日用品がじりじりと値上がりしているようだ。家計に厳しさが増す訳で、世の中、面白くないことが一杯だ。
 そんな中で、趣味の世界の話題だが、昨日行なわれた将棋女流名人戦第3局で、矢内理絵子女流名人が、挑戦者の斉田晴子四段を3タテで破って3期連続の女流名人位を確保した。このところの矢内の将棋は、その強さが目立っていて、今までの清水市代中井広恵、そして斉田晴子の3人時代を完全に塗り替えたようである。
 筆者は、大分前から矢内理絵子のファンで、数年前に東京に居るとき、或る棋戦の解説会で、色紙にサインをもらっている。彼女が書いてくれた言葉が「慧眼」で文字どおりの素敵な女性である。知的で美人、筆者の好みの典型だ。是非、清水市代の持つ5期連続、9期名人の記録を塗り替えて欲しいと期待している。

2.昨日の雅子 (49)
 4日ぶりに午前、午後の2回訪問した。淡々とした一日で、平穏。しかし、言葉の分かり難くさは相変わらずで大変。一階のロビーの奥に、数日前からお雛様が飾られている。季節感が味わえる施設の配慮だ。雅子も、一昨日の入浴時に気がついていたようだ。春近し されど心は いつも冬。

3.連載(397) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(23)
  第一章 入居生活の始まり (その23)

(2)定着への試行錯誤 (その7)
 この入浴時に気づいたのだが、雅子のお尻の尾てい骨辺りが少し腫れていた。そういえば、在宅で一考が介護していた際にも、何回か赤くなっていたことがあったことを思い出していた。その時には、座っている時間が長いだけに、どうしてもそれは避けられず、そんなに気にすることはないと単純に受け取っていた。今回も、そういうことで大したことはないだろうと、それほど気にしていなかった。
 この日、たまたま、災害時を想定した通信機器の確認テストが行われていた。一考は、そのことで、このビルの危機管理がどうなっているのかに興味を持った。エレベーターや非常口が暗証番号でロックされているので、そういう際には、どんな対応になるのかが知りたかった。
 そこで、早速、係長の桜井さんにそのことを確認すると、いつの場合もそうだが、必ず誰かがいることになっていて、その人が誘導することになっているという。またロックは、そういう非常の際には、外されることになっているとの説明だった。この辺りは、一度、訓練が行なわれる際に参加して、体験しておくことが大事だと思うのだった。
 この日の夜、霧子さんから、雅子の様子を確認する電話があった。雅子は、頑張って、一日も早くこの施設の生活に慣れようと努力していること、また、初めて入浴したことなどを報告し、特に、問題がないので心配は要らないと伝え、更には、伸子さんがよく顔を見せてくれることを付け加えて安心してもらった。
 翌朝、五日目の朝、一考が施設に顔を出すと、雅子がお尻が痛いという。前日、一考が帰った後に、痛くなったので、介護士さんの機転で、ナースに看てもらったようだ。ナースの話では、特に問題はなさそうで、少し、横になる時間を増やす方がいいだろうというサジェスチョンだった。しかし、その部分が今朝になっても少し痛むと言うのだ。そこで、一考は、改めて、介護士さんにナースに見てもらうようにお願いした。
 その結果、具体的に、今日から、昼間に少し横になる時間をとって、様子をみることになった。いずれにしても、こういうちょっとした困った場合に、在宅時と違って、直ぐにナースや医者のチェックのサービスを受けられる訳で、一考は、こういう緊急時に、速やかな対応が可能なことで、その有難さを実感するのだった。(以下、明日に続く)

タグ : 矢内理絵子 イージス艦 ギョーザ事件 清水市代 斉田晴子 中井広恵

412 大詰めの名人戦挑戦者リーグ

 月が替わった。何か急に自分達の環境が変わる訳でもないが、何故か気分は新たになる。プロ野球も、例年通りキャンプインでシーズンに備える。
 しかし、ガソリン国会も、プライム問題も、引き続き先行きが不透明の中での動きが続く。中国製のギョーザの被害が拡大していて、食への不安が拡がる中で、ビール、みそ、チーズ、蒲鉾などの食品の値上げが予定されていて、楽しい話題は見つけ難い。
 しかし、趣味の世界の将棋界は、4月から始まる名人戦での挑戦者を決めるリーグ戦(9回総当りリーグ)が大詰めに来ていて、今日、ラス前の8回戦の5局が一斉に行なわれる。目下、羽生2冠、三浦八段がトップを走り、前回の挑戦者の郷田九段と新たにリーグ入りした木村8段が星一つを追う展開となっている。今日は朝10時から深夜までこの展開を楽しませてもらう。、この戦いには、中東の笛もないし、八百長や談合も、ましてや不正などは存在しない。そこにあるのは、正々堂々のた知恵比べ、読み比べの真剣勝負だけである。郷田九段に勝って欲しいが、果たしてどうか?

2.昨日の雅子(29)
 孫の写真をコピーして飾ってやった。多少は心の和みになるのでは。症状には大きな変化もなく和やかだった。夕方には、明日から移動されるヘルパーさんが挨拶に来られたので、暫しの間、名残を惜しんでいた。

3.連載(377) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(3)

  第一章 入居生活の始まり (その3)
(1)新たな門出 (その3)
 大体の準備が終わったところで、車椅子に座り直して、母親のところに挨拶に連れて行ってくれた。何か、娘が嫁に行く日の朝のようで、雅子は、必要以上に緊張している自分を意識した。
 そう言えば、あの嫁ぐ日のことが、雅子の脳裏に甦ってくるのだった。もう四十年近い前のことだったが、意外に鮮明にその時のことが思い出される。確か、あの日も秋晴れの好天だった。お見合いという古風な形で結ばれることになっただけに、愛だの、恋だのといったちゃらちゃらしたものとは無関係で「まあ、いいか」といった軽い気持ちで決意した結婚だった。母親の「そろそろ決めないと売れ残りますよ」との繰り返しの脅しが決断を後押したのは確かである。それなのに、その朝、両親に挨拶に伺うと、悲しくもないのに、何故か涙が溢れてくるのが不思議だった。「しっかりと尽くすのですよ」と、それまで育ててくれた時と同じトーンの厳しい激励の言葉をもらったのを、今でも忘れていない。その言葉に「どんなことがあっても、戻って来ることは許しませんよ」という強いメッセージとして受け取っていた。そこには、雅子を生んで急死した前妻の後に嫁いできて、五人の子供たちを育て上げた継母の、しっかりと責任を全うしたという自負を感じ取っていたからである。従って、その時の雅子の気持ちは、そんな継母への感謝と同時に、その期待に沿って、明るくて楽しい家庭を築いていきたいという単純明解な希望に満ちたものだった。
 それだけに、夢のない片道切符を手にした先行きのはっきりしない今日の旅立ちとは、天と地の違いを感じていた。換言すれば、今日の旅立ちは、恰も立ち込める霧の中に向かうような心許ないもので、それを口にすることさえ憚られる重苦さを感じていた。それでも、そんな思いは出来るだけ顔に出さないように務めながら、淡々とした気持ちを、義母への挨拶に出向いて来たのだった。
 義母の方も、この日の雅子の旅立ちを独特の古い感覚で捉えていた。とにかく、そんな年齢になって老人ホームに入居することに、この上ない気の毒さを思い、心からの同情が先行していて、雅子と顔を合わせるだけで涙するような気持ちの高ぶりの日々が続いていた。
 いつもは、昼前に起きて、朝食と昼食を兼ねた食事をするのが義母も日課なのだが、この日は、雅子の旅立ちに備えて、いつもよりも早起きして雅子が挨拶に来るのを待っていた。その雅子が挨拶訪れた時には、ちょうどその朝食と昼食の兼ねた食事に手をつけた直後だった。(以下、明日に続く)

タグ : キャンプイン 名人戦挑戦者

370 羽生2冠が1000勝達成

 昨日行なわれた将棋名人戦挑戦者決定リーグ戦(A級リーグ)で、羽生2冠久保八段に激戦の末に勝ち切って、プロになって以来、通算1000勝を達成した。将棋界では8人目の快挙である。これで、名人挑戦者リーグでも、5勝1敗となり、郷田九段、木村八段、三浦八段と並んでトップに立ち、有力な挑戦者候補となっている。 (因みに、1000勝達成者の後の七人は、大山、中原、加藤、谷川、米長、内藤、有吉) なお、来年の年明けから始まる王将戦のタイトルマッチでは羽生王将に、久保八段が挑戦することになっていて、昨夜のような激戦が期待される。
 羽生2冠の素晴らしさは、この記録に至るスjピード、勝率が抜群であることだ。昨日で1000勝373敗で勝率は0.738と驚異的な高さである。あとは、大山十五世永世名人の持っている1433勝(781敗)の記録を何時越えるかに注目が集まる。年間60勝と大変なハイペースで勝ち進んでもまだ7年以上は掛かる。期待して見守りたい。
 そんな快挙の一方で、薬害肝炎訴訟の和解協議は決裂の危機に立たされている。補償金額を大幅に増やした政府案に、原告側はお金ではないと反発している。原告側の訴えを見ていると、何故か、あのイラクで誘拐された高遠菜穂子さんら三人の親族達が政府に訴えていた風景を思い出させる。この場合は自己責任は全く存在しないので状況は全く違うが、原告側にも、この辺りで、実を取って妥協をする踏み込みが、少しはあってもいいのではと思うのだが。

連載(335) 難病との闘い
      第十二章 番外編 介護の経緯、その内容の分析、総括 (4)

(3)介護の基本作業は「抱き上げ」
 雅子の場合、今の医学の技術では、病気の完治の見込みがない。それだけに、介護をしていて、一考が感じる一番の大変さは、それがエンドレスに続くことだ。つまり、これをやれば終りだという切れ目がないのが、精神的な負担を大きくしていたが、それも、今では、それほど感じなくなっている。
 さて、この二年近くの介護を振り返って思うことは、介護の基本作業が「抱き上げる作業」であるということである。何事をするにも、この抱き上げの作業を伴うことが殆どだ。大まかに言って、一つの作業を行うのに、通常、4回の抱き上げる作業が必要となる。
 例えば、トイレに行く時のことを考えてみよう。いつものマッサージ椅子から、移動用の車椅子に移す際に抱き上げる。そして、トイレに連れて行き、便座に移す際に抱き上げる。次に用を足して、再び車椅子に移す際、更には、戻って来てマッサージ椅子に移る際にも抱き上げ作業は必要である。つまり、トイレに一度連れて行くだけで、4回の「抱き上げ」作業が必要になるのだ。
 入浴の場合を考えてみよう。マッサージ椅子から車椅子、そしてトイレの便座、更にはお風呂場の椅子に、そして湯船に入れる際、また、湯船から出す際、、風呂板に座らせる際、車椅子に移してベッドまで運び、ベッドに座らせる際、そして着替えて車椅子に、最後に、マッサージ椅子に戻るという具合で、トータル、10回の「抱き上げ」作業が必要である。
 外出の場合はどうだろうか。主な出先は、病院、美容院が殆どだ。たまには、琵琶湖一周のようなドライブも行ないたいと考えているが、最近ではなかなかそのチャンスがない、
 その外出時の場合も、抱き上げ作業は欠かせない。マッサージ椅子から室内車椅子で玄関の上がり口、それから屋外車椅子に移し、車への移動、そして車を降りて車椅子までの半分で10回の抱き上げが必要で、戻って来ると、トータル20回となる。
 こうして考えると、外出しない日でも、起床時に2回、トイレが少なくとも7回で都合28回、お風呂で10回、食事3回で6回、就寝時に2回で、トータル48回、外出する日には、それにプラス20回で、総計68回、抱き上げる作業を行なっている。体重、45Kg程度の身体をそれだけ持ち上げるのは、大変な力作業である。最近の雅子は、自力で自分の身体が支えられない。それ故に、それだけ多くの抱き上げ作業は、相撲に喩えれば、恐らく、10番ぐらいの真剣勝負に匹敵するのではと思う。
 最近では、一考も腰の痛さを気にし始めていて、鍼薬にお世話になっている日が多い。自分の体力とも闘いながら、毎日の介護に取り組んでいる今日この頃だ。(この番外編は本日で終り、明日からは、第十三章 介護付き有料老人ホームへの誘い を連載します)

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325 分裂を危惧

 意外にも、小沢代表が辞意を撤回しそうな流れにあるという。以前にも、そんな事例があったというが、あそこまで不満を開陳しただけに、何だか、小沢一郎らしくない気もする。民主党の連中にすると、「もうついてゆけない」という不満がある中で、今辞められると党としての纏まるシンボルがなくなり、強い戦いが出来なくなってしまうという心配に加えて、参議院議員17人以上を連れて集団離党されると、今までの参院での野党過半数の地位を失う危惧があるからだ。今後の成り行きが注目される。
 さて、「分裂」というと、そこには心を揺さぶるドラマティックなものの存在を感じる。別の世界の話だが、今年、印象に残っている分裂事件があった。女流将棋界の話である。女流棋士の地位向上を目指して、女流棋士全員(56人)が日本将棋連盟からの示唆もあって、独立しようとしたところ、その手順で齟齬があったようで、日本将棋連盟の米長会長の嫌がらせ的な対応があって、二つのグループに分裂してしまった。LPSAの名称のもとに独立に参加した17名とそのまま日本将棋連盟に留まった39名の二つのグループである。因みに、女流棋界には、目下4つの大きなタイトル(名人、王将、王位、倉敷藤花)があるが、昨日までは、全て日本将棋連盟所属の女流棋士が保持していた。
 しかし、昨日行なわれたタイトルを賭けた女流王位戦5番勝負の最終戦で、LPSA所属の石橋四段が師匠である清水王位を3勝2敗で破り、LPSAに初のタイトルである王位を奪取した。快挙である。
 石橋四段のこの5番勝負に賭けるその意欲は大変なものであって、LPSAの存在意義、面子にをかけての決死の戦いを展開した。シリーズは勝った、負けたの繰り返しで2勝2敗の対し、そして、果たせるかな、石橋4段は、昨日の最終局を見事に勝ち切って、タイトルをもぎ取った。弱いものの味方を自称する筆者は、朝からインターネットでその棋譜を追いながら、久し振りに興奮し「快哉」の気持ちを味わう楽しい一日となった。 今後、女流棋士全員が、LPSA(The Ladies Professional Shogi-Player's Association of Japan)に纏まることを期待している。

連載(290) 難病との闘い
      第十章 笑うに笑えないエピソード (32)

(16)命拾い (その3)
 「ええ! 私がサイドを引いたまま走っていた? それはなかったと思うのですが。今朝、西大津の自宅から出発して白髭神社まで直行、そこで30分ほど休憩してから、ここまで来たのです。白髭神社では、サイドブレーキを引いて休憩していたことは確かで、その後、そこを出る時から、ずっと、サイドブレーキを引いたまま走っていたということになりますが、そんな状態で、快適に走れます? 出足から違和感もなく、調子よく走っていましたよ」一考は、自分の運転ミスだと指摘されて面白くなく、無愛想な顔で「それはないよ」と言いたげに、疑問を投げ掛けた。
 「走り出すと、結構走れるものですよ」男は、今度は、ためらうことなく、強い口調でそう言った。
 一考は、休憩を終えて白髭神社を出発する時のことを改めて思い起こしていた。その時に、アクセルを踏んで車が滑り出す時の感触は、いつものそれだった。どう考えても、サイドブレーキを引いたまま、走り出したとは思えなかった。確かに、ずっと以前に、うっかりして、そうして走ったことはあるにはあったが、途中で気づいて慌てて直した経験はある。それだけに、その後は十分に注意していた。
 「先ほどおっしゃった、検査時で何らかの不備があったと考えられませんか? 自分では、サイドを引いたまま走っていたとは、どうしても思えないんです」一考は、納得できないといった不満な顔になっていた。
 「ないとは言えませんが、一応、プロがやっている仕事ですから、なかなか考え難いんですよ」男は、どう答えていいのか窮していた。
 「なるほど。そりゃそうですよね。やはり、自分がミスっていたのかなあ。ところで、とりあえず、どうしたらいいんでしょうか?」一考は、不味いことになってしまったと思いながら、気を取り直して、これからの対応についてアドバイスを求めた。車から降りて、車椅子に移って、傍で成り行きを見守っている雅子の表情は見るからに心配そうで、浮かない顔であった。春にしては、強い日差しが容赦なく、三人に照りつけていて、一考の額には汗が滲み出ていた。
 「ここから、10Kmほどのところの新旭に、カローラの修理場があります。そこで点検してもらうのが一番安心できる対応です」男は、少し考えてから提案した。
 「分かりました。そうしましょう」一考には選択の余地はなかった。安全を期すのが第一であったからだ。(以下、明日に続く)

315 松井、秀樹に三振

 今年のMLBのワールドシリーズには日本選手が3人も出場していて面白しろそうだ。昨日は、日本人同士の対決が実現、ロッキーズの松井稼頭夫選手が、救援したレッドソックス岡島秀樹投手の力投にフルカウントから空振り三振を喫した。この日の岡島投手は、今期最高の出来ではと思われる好調さで、ロッキーズの反撃を完封した。監督からの信頼も厚く、今後ももっと活躍しそうだ。
 その反面、あれほどワールドシリーズに出場することを夢見て米国に渡った松井秀喜選手が、もう5年を過ぎたが、未だにその夢を果たしていない。皮肉なことに、別の松井と秀樹が堂々と出場して頑張っている。松井秀喜はどんな思いで二人の活躍を見ているのだろうか。彼のことだから、来年こそはと闘志を燃やしていることだろう。 心配なのは、松井秀喜を重用してくれたあのトーリー監督はもういない。厳しい現実が待っていることに変わりはない。
 なお、明日登板予定の松坂大輔投手だが、100億ドルの買い物だっただけに、明日こそは、その片鱗を見せて、今季最高のぴりっとした投球を見せて欲しい。

連載(280) 難病との闘い
      第十章 笑うに笑えないエピソード (22)

(10)大チョンボ (その3)
 一考に不覚の事態が起きたのは、その直後だった。雅子をトイレに送り込んでほっとし、いつも、雅子が座っているマッサージチェアに腰を下ろしたのがいけなかった。アロンアルファが瞬間的に接着効果を発揮するように、一考は瞬間的に眠りに落ちてしまったのだった。このところ飲んでいなかったお酒を、しこたま飲んだのが効いていたのだ。そのまま爆睡に落ち込んだのである。
 雅子は、トイレの便座に座って間もなく一考の鼾(いびき)を耳にして不安になった。どうやら、眠ってしまったようだ。しかも、それは、本格的な眠りで鼾も大きい。これでは、なかなか起きてくれないのではないか。どうしたものかと考えている間に、いつも、手を置いている握り棒の台から、その手が滑り落ちた。今の症状では、自分で手を元に戻せない。その手を、そこに置くことで、身体のバランスを保っていただけに、次第にバランスを失い姿勢が崩れ始めた。ぐっと、力を入れて頑張ってみるが、体力を消耗し疲れが増して来るだけだ。また、座っているお尻も痛くなり、我慢の限界に近づいていた。走行するうちに、眠さも加わって、雅子は、パニック状態に追い込まれつつあった。それでも、一生懸命に声を張り上げて、繰り返し一考を呼んでみるが、一考の深い眠り様からは、ちょっとやそっとでは目を覚ましそうに無い。
 雅子は途方にくれてしまった。必死に助けを求める声もかすれ気味になって、なかなか大きな声が出ない。これでは手の打ちようがない。正真正銘の八方塞で手も足も出ない。何とか、一考に目を覚ましてもらわねばと頭を巡らすが、適当な知恵が出て来ない。そうこうしている内に、疲れも酷くなり、睡魔が襲ってきていて、雅子の頭の中は朦朧とした状態になっていた。
 どのくらい時間が経過したのあろうか。身体が折れ曲がって、頭が便器のところまで垂れ下がってきていて、呼吸するのも苦しくなっていた。このままでは、死んでしまうかもしれないという不安が朦朧とした頭の中を過ぎる。眠気、疲れが重なって、半分意識が朧になっていた。もうだめかなといった思いが頭を過ぎった。とにかく、身体が痛かった。頭が垂れ下がって、身体が二つに折れているような姿勢になって、半分無意識の状態で助けを待っていた。
 どれだけ時間が経過したかは定かではなかったが、突然、トイレのドアがけたたましく開けられた。(以下、明日に続く)

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