プロフィール

Author:相坂一考
滋賀県大津市出身
07年1月に推理小説「執念」を文芸社から出版

このブログは4部構成です。冒頭の枕に続いて、
1部が「独り言コラム」でキーワードから世の動きを捉えようと試みる。
2部が「プライベートコーナー」で妻、雅子の近況。
3部が連載「難病との闘い」です。
(09−02−16に修正。09−03−01に再修正、09−09−30に3度目の修正)


 

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709 十代の若手の台頭

 年金政策に不満を抱いた連中の政治テロではないかと見られていた元事務次官連続殺傷事件は、どうやら、その裏にもそんな込み入った背景も、確たる主張もなさそうだ。何だか騙されたようで、しっくり来なくて、とても切ない気がしている。その辺りが、今の日本の実情を反映しているのかも知れない。
 漫画を読むことで、人間の幅の広さを匂わせていた麻生総理も、漢字が正しく読めないといった最近の話題を知らされると、「実は、漫画を読む程度のレベルだったんだ」と解釈してしまいそうだ。テレビのワイドショーで誰かが言っていたが、祖父の吉田茂は「バカヤロー解散」をしたが、孫の麻生太郎は「馬鹿が解散」をするというギャグである。少し寂しい気がしてならないのは、筆者だけではないだろう。
 そんな面白くない話の中で、この連休期間内でも、十代の人たちの素晴らしい活躍が気分を明るく、ほっとさせてくれているのは救いである。
 一つは、ゴルフの石川遼選手だ。昨日も良く頑張って単独2位に入り、17歳で賞金額が1億円に届きそうだという。最近の実力アップは大したもので、見ていて惚れ惚れするプレーを随所に見せてくれていて、あのジャンボ尾崎の再来かと彷彿とさせてくれる。当初は「ハニカミ王子」といわれていたが、今やしっかりした「ハンサム王子」である。
 一方、女流将棋の世界では、一昨日も、この欄で取り上げたが、あの16才の高校生棋士の里見香奈二段が、昨日、清水市代倉敷藤花に勝って、堂々の2連勝でタイトルを手中に収めた。中学時代から注目されていて、暫くその壁を破るのに苦労していたようだが、ここに来て実力がついて来たようで、初めてのタイトル奪取を果たした。
 女流棋界は、女流王将(清水市代)戦が、今年を最後に中断が決まり寂しくなっていて、現在では、名人(矢内理絵子)、王位(石橋幸緒)、女王(矢内理絵子)、それにこの倉敷藤花の四つのタイトルだけとなる。この倉敷藤花戦は、倉敷出身の大名人、大山康晴第十五世永世名人を讃えた名誉ある棋戦である。
 いずれにしても、女流棋界は、長かった清水市代、中井弘恵、斎田晴子時代から、矢内理絵子、石橋幸緒、千葉涼子時代に入ったと思われていたが、今回の里見香菜二段のタイトル奪取を切っ掛けに、一気に里見時代が到来するような気がしている。来年の女流名人戦の予選でも、里見二段が挑戦者の有力候補になっていて、矢内名人を破る日が近いかもしれない。着実に世代交代が進んでいるといえる。
 どこの世界にも世代交代は必要なのだが、こうして見ると、政治の世界だけが、それが最も遅れているような気がする。米国のオバマ新大統領のような若手の魅力ある政治家は日本にはいないのだろうか。
 因みに、筆者を惹き付けて、ファンにしてしまうキーとなるポイントは、その人が持っている素晴らしい能力、優れた技術力、人間としての偉大さなどの存在であるが、そこに、少し抑えた謙虚さを不可欠としている。そういう観点からしても、この二人は全く申し分ない素晴らしい魅力に満ちた逸材のようだ。

2.連載(674) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(291)
  第六章 真夏の夜の夢(142)

(9)さよならを告げる旅(その10)
 今朝、自宅を出る際には、もう、戻ることもないだろうと思って、思いを断ち切るように出掛けたのだったが、こうして、改めて家に戻ってみると、今までにない、安らぎ、心がときめくのを覚えたのだった。非常に不思議な心境で、思わず入口で一礼をして入ったのである。それだけ、心が高ぶってきているのだろうと、一考は自己分析していた。
 思えば、この家は、25年ほど前に、大阪勤務になってここに戻って来た時に親父の土地を借りて作ったこじんまりした家で、いずれは、母屋も含めて改築しなければならないと思っていたが、結果的には、雅子の思わぬ病気で、母屋はそっちのけで、自分の住まいだけをリフォームするに止まってしまった。中途半端な人生の象徴だと言えよう。
 一考は、もう一度自分の部屋に戻って来られて、何とも言えない気持ちで一息ついていた。懐かしさと云うか、親しさというか、そんな温かい安堵の気分だった。二階の窓際にある自分の机の前に座ると、窓からは、静かな近所の佇まいが眺められた。この辺りも一考が大阪勤務をしている頃は、まだ畑が広がっていたのだが、今では新しい戸建ての住宅が数件建っていて、景観も住宅地の様相をも見せている。通りから少し入っていることから、静かな一角であることは昔と変わらない。
 机の上のコンピューターの蓋の部分をそっと撫でてから、そっと部屋を見回してみた。ごちゃごちゃした部屋だが自分には気に入った憩いのスペースだった。奥のクロークのドアを開けて、雅子の衣装を改めて眺める。相変わらず整然とハンガーに掛かっている様子は壮観と言えば大袈裟だが、頑張ってその存在を示してくれている。このまま残していくのだが、いずれは棄てられてしまう運命だろうと思うと少し寂しい思いがした。
 一考は腕時計に目を遣った。1時半を少し過ぎているのを確認すると、ゆっくりと一礼して部屋を出た。今度こそは、もう決して戻ることはない。そして、静かに階段を下りると、一階のリビングに顔を出して、ここでも一礼してから、きびすを返すと母屋に向かった。予測した通り、久子は帰った後のようで、母親がいつもの椅子に座ってなにやら書き物をしていた。最近は耳が遠くなっていて、傍まで行っても気づかないことが多い。一考は、近づいて母親の肩に手を掛けた。びっくりしたように一考を見た母親は、いつものように心配そうな顔で話しかけてきた。(以下、明日に続く)

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