昨日のNHKの夕方7時のニュースで、一時は大人気番組だったプロジェクトXのチーフプロデューサー、今井彰がTシャツやマフラーを万引きした疑いで逮捕されたと報じていた。それまでの民放のニュースでは名前を出していなかったが、NHKは自社の社員の実名をしっかりと公表していた点では評価できよう。
今から7年ほど前、筆者が現役の最後の年だったが、あるセミナーでこの今井氏の講演を聞いたことがあった。人気番組に仕立て上げた「プロジェクトX」のサクセスストーリーや製作裏話を面白おかしく話してくれた。
記憶に残っているのは、あの時間帯は裏番組の推理ドラマに人気があって、NHKには不毛の時間帯だったという。この種のドラマは決まりきったように、ドラマの最後の場面では、海が見える崖の上に事件関係者が集まってきて、面白くもない謎解きをする。そんなワンパターンの番組に打ち勝ちたいと、新しい番組作りを目指していて仕上げた番組がこのプロジェクトXだというのだった。
そういう意図から、特に力を入れたのがテーマ選びだが、加えてテーマ音楽にも力を入れたという。そして、自らがかつて勇気づけられたこともあって、気に入っていた中島みゆきさんに白羽の矢を立てて、三顧の礼を尽くして口説いたのだという。そして、生まれたのが、あの名曲「地上の星」だったという手柄話も面白かった。真面目な努力は裏切らないと自らの著書で語っているようだが、見た目は、確かに真面目そうで気概のある紳士だった。
しかしながら、この種の番組には必ず終りが来る。感動的な話の種が尽きてくるのだ。最後の方になって、余計なやらせが発覚し始め、遂に命脈が尽きたようだった。いい番組だったので残念だったが、同氏ならまた新しい番組を作ってくれるのではと期待していたのだが、自らが主演の思わぬエピローグを見せてくれたのには、ちょっとした驚きを覚えている。
有名人、文化人がこの種の犯罪を犯すことは枚挙にいとまが無い。最近では、あの三浦和義のコンビにでの万引きがあった。また、大学教授でテレビでは経済問題のコメンテーターを務めていたあの植草一秀氏の手鏡事件も印象強く記憶に残っている。これらは、魔が差したというよりも、一種の病気かもしれない。
そういえば、同じ昨日のニュースではテノール歌手でNHKの紅白歌合戦にも出場したことのあるジョン・健ヌッツオが覚せい剤容疑で逮捕されている。
そういう意味では、プロジェクトXのこの種の裏番組は、この世からは消え去らないのだろう。
2.連載(682) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(248)
第六章 真夏の夜の夢(150)
(9)さよならを告げる旅(その18)
この長命寺に繋がる道の前を通って、坂道を更に進むと、程なくグルメ通に人気があるちょっとしたレストランがある。シャーレ水か浜である。琵琶湖を眼下に望む崖の上にあって眺めも最高だ。雅子が元気な頃、友人達と食べ歩いたところの一つのようだった。一考は、その前をゆっくりと通りながら、雅子に「懐かしいだろう」と声を掛けた。雅子は少し声を出したようだが言葉にはならなかった。
「ここは意外においしいのよ」とでも言っているように聞こえた。一考は、「二人でも一緒に来たかったね」と云うと、今度は声を出さずに頷いていた。この辺りは、雅子も気に入っているゾーンのようだった。
道は九十九折になった坂道に入っている。この道は運転には注意を要するが、一考の好きなドライブコースでもあった。曲がりくねった道を上り下りするだけに神経を使うが、それだけ楽しさもある。このコースの殆どは、道に沿って両側は木々で覆われていて、鬱蒼としている。と云うよりの、森の中に車の道を切り開いたといった感じである。従って、今日のような快晴の日でも薄暗く、琵琶湖も、その木々が途絶えたところどころで、少し見えるだけだ。しかし、その合間から琵琶湖を覗くと結構高い崖の上を走っていることに気づく。
「雅子、実を言うとね、この辺りも、我々の最後の舞台に相応しいと考えたのだが、途中で車が木にでも引っかかってしまえば、目的は完遂できないことにもなるので辞めたんだよ」一考はそう言いながらまた弘子に目を遣った。しかし、ここでの運転は油断が出来ない。対向車に気づいた一考は慌ててスピードを落とし、少し左に寄って対向車を避けた。うっかりすると、こんなところで事故でも起こし、計画をご破算にすることになったら、全てがパーである。ゴルフのパーなら一考には上出来だが、ここでのパーは許されない。一考は、そんなことを考えながらハンドルを握り直した。くねくね曲がった坂道を進むとやがて下り坂に差し掛かり、国民休暇村の宿舎に辿り着く。そこを通り過ごして更に進むと、やがて、長命寺前で別れたさざなみ街道に合流する。そこから水車橋、更には愛知川橋渡って北上を続けるが、この辺りは、真っ直ぐな単調な道が彦根までずっと続くのだ。(以下、明日に続く)
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