昨日のお昼のNHK衛星放送第二で放映された「囲碁、将棋ジャーナル」で、日本将棋連盟の米長邦夫会長がゲスト解説者で出演し、司会の日本女子プロ将棋協会(LPSA)の中井広恵会長との共演が実現した。
ご存知の方が少ないと思うが、今の女子の棋士団体は、分裂した状態で二つのグループに分かれてしまっている。一方が従来通り日本将棋連盟に帰属しているが、LPSAのグループは独立した別のグループである。この分裂の過程では、独立グループに移るかどうかで、女子の棋士たちは踏み絵を強いられた辛いステップがあった。全部で50数人の小さなグループなのに、どうしてそんな分裂をしなければならなかったのか、極めて残念に思っている一人である。
この分裂は、筆者の理解では、実につまらない(?)、大人気ない行き違いで分裂と言う最悪の残念な結果になってしまっているのだ。その張本人が米長邦夫会長だと言うのが筆者の理解である。
それと云うのも、そもそもの切っ掛けは、米長さんが、女子の棋士達の環境改善を図るには独立した方がいいのではと勧めたことから始まった動きで、日本将棋連盟の理解の下で始まった活動だった。それが独立の直前で、つまらない行き違いがあって、分裂という悲劇になってしまっている。そこには、両者間で激しい応酬があったと承知している。
その経緯の細かいことはさておき、昨日の二人の共演で、その対立に和みが生まれたのではと筆者は感じたのである。中井さんの「久し振りに兄弟子の優しい言葉を頂きました」というセリフにほっとさせられるものがあったからである。また、解説中に米長会長が「僕は、今は女子の対局には、恐ろしくて部屋に入れないのですよ」と意味深長な言葉を発していた。これには、米長会長も、分裂の原因に自らの関わりを感じ、多少は責任を感じておられるように仮借でき、ここでも一つの和みを感じさせられたのである。
これらのやり取りから、筆者もそれまで知らなかったのだが、米長、中井の二人の会長は、共に故、佐瀬勇次名誉九段門下の兄妹d弟子だったのだ。中井広恵さんが、NHKの小学生名人戦で準優勝し、プロになるために北海道から出て来て佐瀬勇次門下に入った頃、米長邦夫は、既に中原名人時代の良きライバルとして強豪棋士として活躍していた。恐らく、米長さんは、まだ小学生だった中井さんを可愛がっていたはずだ。そんな廻り合わせから始まった二人の関係が、不本意にも女性棋士の分裂の旗を振る形になった中井さんを追い込んだ米長さんという敵対する関係になった訳で、筆者は米長会長に強い怒りを覚えていた。それだけに、昨日の番組共演で、雪どけが始まることになればいいのにと強く感じた次第である。NHKもなかなかやってくれるじゃなかとうれしかった。
昨日の番組後に調べて分かったのだが、今の日本将棋連盟のホームページの棋士紹介欄には、日本女子プロ将棋協会(LPSA)所属の棋士達の名前は削除された形で、記載されていなかったし、その事務所も将棋会館内には存在せず、全くの継子扱いになってしまっていることに驚きと、改めての怒りを覚えたのである。そこまでやっているのかと、大人気なく、痛ましく、悲しく思った。
ところで、今の女子棋界には4つのタイトルがある。その内の王位のタイトルをLPSA所属の石橋幸緒さんが、今期も清水市代挑戦者を退けて死守したことは、そういう意味では快挙だった。これは、LPSAにとっては、今や、貴重な命綱のような気がする。
早く、再び両グループが合流して強い女子プロ組織にして欲しいと願っている。
つまらない分裂ほど愚劣なものはない。自民党も今や、そんな危機に瀕しているようで心配だ。
2.連載(687) 難病との闘い 第2部 小さな幸せを求めて(253)
第六章 真夏の夜の夢(155)
(9)さよならを告げる旅(その22)
その最後の舞台に繋がる大浦の三叉路の少し手前で、一考は思いついたようにハンドルを右に切って、二日前に下見した時と同様にあのJRの永原駅の駅舎に立ち寄ることにしたのである。一考は、自分の人生の最後のオアシスに立ち寄るような気持ちで、車を静かに、ゆっくりとその方向に進めた。
どうやら、一考の頭の中では、その永原駅の駅舎近辺の風景が、あのミシガン州ミッドrンドののんびりとした田舎町の風景を連想させてくれるようで、その雰囲気に特別な親しみを感じているようだった。雅子と二人で、ミッドランドには行けなかったが、似た雰囲気の田舎の風景を見て、今一度、その風景を楽しんでおこうと言う気持ちがあったのだろう。
この永原駅は、つい数年前までは湖西線のターミナル駅であった。今では、湖西線も敦賀まで延長され、北陸線に連結していて便利になっている。いつものように駅前の駐車場に車を止めた一考は、ゆっくりと辺りを見回した。
駅舎の近くに町役場の比較的近代的な建物がある。全体としては現代的な面影も並存している町並みとも言える。一考は、とりあえず、自分だけ車を降りて、身体をリラックスさせた。
改めて見る駅舎は、その造りに山小屋のような感じもあって、それがこの田園風景の中で少し異色な雰囲気を提供しており、一考の頭の中では、米国の田舎町の雰囲気に連動しているようだった、
「最後に、もう一度、この駅舎でも見ておこうと思って、また来ちゃったよ」一考は、車に戻ると、雅子にそう言って話しかけた。自分の中に込み上げてきている郷愁の気持ちを伝えたかったのだ。自分だけが、その雰囲気を一人楽しんでいるのが、何となく悪いような気がしたからである。それから、暫く沈黙が続いたが、タイミングを計るように、一考が口を開いた。
「さあ、雅子、ここが我々の最後の停車駅だよ。次の停車駅は停車せず、その次の停車駅は、いよいよあちらの国になるはずだ」雅子の顔を覗き込みながら、一考は自らに言い聞かせるように、また何かを宣言するような言い方だった。そして、少し間をおいて、今度はとても優しい口調で、ゆっくりとした口調で雅子に話しかけた。
「雅子、君が、ここで、考え直して、この旅はここで止めておこうというなら、最後の演技は中止してもいいんだよ。何も遠慮することはないんだよ」一考は、そう言って、優しい眼差しで雅子の反応を窺った。一考の思わぬ問い掛けに雅子は、驚いたようだったが、懸命になって、何かを言おうと口を動かした。しかし、相変わらず思うように声が出ない。それでも、そこには、必死に首を縦に振る雅子の仕草があった。一考は、雅子のその意志を理解し、黙って静かに頷いていた。先ほど飲んだお薬の効果はまだ出て来ていない。(以下、明日に続く)
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